記者コラム「清流」 お好み焼き

 広島市主催の記者研修に参加中、ある老夫婦が営むお好み焼き屋を訪ねた。ともに幼少期に母を原爆で亡くし、父は病死と戦死。戦争に肉親を奪われたお二人だった。
 おすすめのイカ天入りを注文した。やや太めの麺にソースがしっかりと絡み、ボリュームも満点。感動を覚えながら頬張っていると、おかみさんが「どこから来たの」と気さくに話しかけてきた。静岡県の御前崎市と伝えると「灯台があるところね」とにっこり。取材の時間が迫り、名残惜しいが会計を済ませる。ご主人が「頑張りんさい」と氷水のペットボトルを持たせてくれた。
 なぜあれほど明るく、優しく、温かいのだろう。答えを知るには時間が少なすぎた。もう一度食べに行けば分かるだろうか。
 (御前崎支局・木村祐太)

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