災害関連死防止へ 「伊豆山ささえ逢いセンター」住民交流に尽力 熱海土石流発生1年1カ月

 熱海市伊豆山の大規模土石流は3日、発災から1年1カ月が経過する。復興に向けた動きが本格化する中、被災者の生活再建を支援する「熱海市伊豆山ささえ逢いセンター」は災害関連死を防ぐ活動に注力している。2011年の東日本大震災などでは、長期避難者が生活環境に慣れず持病が悪化して死亡したり、孤独感を抱いて自殺に追い込まれたりするケースがあった。過去の災害を教訓に被災者が集まる催しや仮設住宅への戸別訪問を行い、心身ケアや生活課題の解決に取り組んでいる。

講師の号令に合わせて被災者らが体を動かした健康体操教室。談笑を楽しみ汗を流した=7月下旬、熱海市伊豆山
講師の号令に合わせて被災者らが体を動かした健康体操教室。談笑を楽しみ汗を流した=7月下旬、熱海市伊豆山

 「リズムに合わせて腕を曲げ伸ばし、数字が3の倍数の時は手をたたきましょう」。7月下旬、同センターが市内の交流施設で開いた健康体操教室。講師の号令に合わせて被災者を含む伊豆山の住民5人が脳と身体を活性化させる運動をしていた。自宅が被災し市内の仮設住宅で暮らす小沢アンジェリタさん(70)は知人に誘われて初参加した。「被災前に近くに住んでいた仲間と談笑できた。仮設住宅でのさみしさが和らぐね」と笑みを浮かべた。
 この体操教室は、避難生活で引きこもりがちな高齢者の基礎体力維持や住民同士の交流を促すことが目的。同センターは昨年10月に設立されて以降、被災者が集まる催しなどを定期的に企画し、住民同士の会話や支え合いの場を設けてきた。被災地は現在も警戒区域の設置で立ち入り規制され、伊豆山を離れて暮らす長期避難世帯は120を超える。原盛輝センター長は「会話や交流が深かった近隣同士の関係が災害によって分断されつつある」とし、「住民交流を増やし、孤独感を取り除くことが災害関連死を防止する鍵になる」と狙いを明かす。
 ただ、大勢が集まる場所への参加をためらう被災者も少なくない。そこで同センターは被災者の健康状況や生活再建への悩みを把握するため、看護師や社会福祉士の資格を持つ相談員6人が仮設住宅へ戸別訪問している。現場で浮かび上がった課題は会議で共有し、個人に適した解決策を探る。被災者の健康状態や生活環境に応じた支援体制「ソーシャルサポートネットワーク」の構築にも力を入れている。ある相談員は「必要な支援は十人十色で、被災者の境遇に適した効果的なサポートを心掛けている」と語る。
 東日本大震災や16年の熊本地震では、発災から1年以上経過した後でも災害関連死が起きたケースが多数ある。原センター長は「生活再建への道のりは始まったばかり。被災者を誰一人取り残すこと無く全力で見守っていく」と述べた。
 (社会部・市川幹人)

 <メモ> 災害関連死は土石流や震災による津波、家屋倒壊などに巻き込まれて死亡(直接死)することではなく、災害の影響を受けて間接的な原因で亡くなること。長引く避難生活に伴う体調悪化をはじめ、心的外傷後ストレス障害(PTSD)やエコノミークラス症候群、将来を悲観した自殺などが該当する。8月1日現在、熱海土石流は死者27人のうち、関連死は1人。国によると、2011年の東日本大震災は死者1万9689人のうち約2割、16年の熊本地震では死者273人の約8割が関連死だった。
 災害関連死に法律上の明確な定義はなく、遺族の申請を受けた自治体が災害との因果関係を審査して認定する。認められれば災害弔慰金支給法に基づき、家計を主に支える人が亡くなった場合は500万円、それ以外は250万円が市町村・都道府県・国から遺族に支払われる。

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