沢の水、詳細調査を 生態系への影響軽減【大井川とリニア】

 リニア中央新幹線工事に伴う南アルプスの生態系への影響を協議する国土交通省専門家会議は2日、第2回会合を都内で開き、大井川上流域の沢への影響について議論した。京都大防災研究所水資源環境研究センター准教授の竹門康弘委員(生態系管理学)は一般論として、沢全体として水枯れが発生する時期でも「水が流れるところもある」と指摘し、生態系への影響の回避・低減策を図る上でこうした「ホットスポット」(同委員)の特定が重要だと説明した。

国土交通省専門家会議で委員が示した主な意見
国土交通省専門家会議で委員が示した主な意見
国土交通省専門家会議終了後、見解を述べる県の難波喬司理事=2日午後、都内
国土交通省専門家会議終了後、見解を述べる県の難波喬司理事=2日午後、都内
国土交通省専門家会議で委員が示した主な意見
国土交通省専門家会議終了後、見解を述べる県の難波喬司理事=2日午後、都内

 JR東海は、トンネル工事の影響が生じる恐れがある五つの沢に関し、県有識者会議生物多様性専門部会で減水予測を示したものの、生物や植物の細かい分布状況は提示していない。竹門委員は「ホットスポットが枯れると大きな問題だが、それ以外なら影響が少ないということもある」と指摘し、JRに詳しいデータの提供を求めた。
 大同大教授の大東憲二委員(環境地盤工学)は「沢の流量は地下水や雨水が合わさっている」と述べ、不確実性を伴うJRの減水予測の精度を上げるために、まずは沢の水の構成要素を調べるべきだと主張した。
 オブザーバーとして出席したJR東海の宇野護副社長は会議後の取材に「(会議事務局の国交省)鉄道局と相談し、必要なデータは提供したい」と述べた。
 今回の会合は、論点を整理するためにこれまでの県とJRの協議について県の難波喬司理事から聞き取り、その後、意見交換した。次回会合も引き続き、大井川流域市町や市町が推薦する人物へのヒアリングを行う予定。

 ■難波県理事「無理難題言ってない」
 国土交通省専門家会議に出席し、これまでの県とJR東海との協議について説明した県の難波喬司理事は会議後、「健全な対話をしていると(専門家会議委員に)評価していただいた。県が無理難題をふっかけているのではないかという疑問が社会に存在するが、そうではないと認めてもらった」と取材に答えた。
 一方で、JR東海とは課題の認識や意見に相違があると改めて述べた。「(上流域で)川の水が減るのが確実視される中、(生態系の議論は影響の)回避、低減が必要」とし、大井川の減水対策の議論と比較して「こちらの方がハードルが高い」との認識を示した。
 (政治部・尾原崇也)

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