コロナ重症化率「0・01%」対策継続、割り切れぬ思い【黒潮】
病原性(毒性)が弱まり、うつりやすくなった新型コロナウイルスが、社会にいっそう混乱を招いている。感染症医の中には「もう特別な感染症ではない。病態は風邪と同等」との見方がある。「風邪」を完全に封じ込めるのは不可能だ。長期間にわたり大人も子どももマスクを着け続け、人との距離を保ち続けてきた弊害も、見過ごせない時期に来ているように思う。
「マスクを外すのに抵抗を感じる。そのことが不安」「高齢者が健康的な生活を送れなくなり、認知症が進行した。制限をするという対策が良かったのか疑問」―。静岡新聞社の「NEXT特捜隊」には、今なおマスク着用をはじめとする感染対策が、2年前とほぼ変わらず続いていることへの「割り切れない思い」が届いている。
県が公表したオミクロン株の重症化率は0・01%で、季節性インフルエンザより低い。1年前は感染者の4人に1人が入院していたが、今年4月以降は2%未満だ。
矢野邦夫・浜松医療センター感染症管理特別顧問は「肺炎を引き起こしていた1年前とは異なる。ワクチンの効果を得にくい免疫不全の人を除いて、コロナが容体を深刻な状態に悪化させることはほぼない」と言い切る。
風邪でも感染者数が爆発的に増えれば、医療は逼迫(ひっぱく)し、死者が出る場合もあり得る。しかし今、医療が逼迫しているのはコロナの病態そのものよりも、コロナの社会的な扱いに起因する面が大きいのではないか。
現場から聞こえるのは、自宅で休めば治る軽症者が「陰性を確認しなければ出勤できない」といった理由で検査に殺到したり、けがで搬送された患者でも陽性ならコロナ病床に振り分けられて病床を埋めたりする-といった不条理だ。
どんな病気でも、かかれば重症化したり亡くなったり、後遺症のような症状に悩む人がいる。それらのリスクを下げるためにワクチンがある。行政も政治家も私たちも、そろそろ「鳥の目」でコロナを捉え、日々の生活も尊重したバランスの良い政策に転換していく必要がある。