掛川で自動運転実験スタート 記者試乗、スムーズ走行に驚き

 静岡県などは1日、掛川市中心部の公道で自動運転の実証実験を始めた。公共交通の運転手不足や高齢者の移動支援など地域課題を解決するための有効な手段と位置付け、実用化に向けた可能性を探る。2~7日は一般客の体験乗車も予定する。

公道を走行する自動運転車両。カメラやレーザーレーダーを搭載する=1日午後、掛川市
公道を走行する自動運転車両。カメラやレーザーレーダーを搭載する=1日午後、掛川市
自動運転車両を監視する遠隔コントロールセンター=1日午後、掛川市役所
自動運転車両を監視する遠隔コントロールセンター=1日午後、掛川市役所
公道を走行する自動運転車両。カメラやレーザーレーダーを搭載する=1日午後、掛川市
自動運転車両を監視する遠隔コントロールセンター=1日午後、掛川市役所

 実験区間はJR掛川駅北口から掛川城までの約1キロで、定員8人の車両を走らせる。市役所に遠隔コントロールセンターを設置し、車両に搭載したカメラ映像を通じて運行状況をリアルタイムで監視する。東急や名古屋大、掛川タクシーなどの協力を得た。
 運転手が乗車するが、路上駐車の車両を追い抜く場合などを除いてハンドルは操作しない。県の3次元点群データを活用したデジタル地図と、車両に設置したレーザーレーダーのデータを照合し、周囲の障害物を感知しながら走る。今回の実験は5段階の自動運転レベルのうち、運転手が緊急時に回避運転などをする下から2番目の「レベル2」相当の走行となる。周囲の確認が難しいとされる夜間時間帯にも実験を行う。
 県は2019年度から公道での実証実験に取り組む。昨年11月に伊東市で発生した接触事故を受けて中断していたが、部品交換やシステム改修により安全性が確保できたとして再開に踏み切った。今年10月に松崎町、11月に沼津市、12月に掛川市でもそれぞれ実施し、複数車両の遠隔監視や運転手が乗車しない走行実験も計画している。
 掛川市の久保田崇市長は出発式で「交通規制をせずに実験ができるのはすごいこと。最新技術を公共交通にも早期に導入したい」と語り、県交通基盤部の和田直隆参事は「24年度の自動運転移動サービスの実現を目指したい」と意欲を示した。

 ■試乗ルポ 「実証実験中」表示に工夫必要か
 自動運転の実証実験では記者も乗り心地を試してみた。実験車両はリチウムイオン電池を積んだ電気自動車(EV)。最高速度は19キロとやや遅めだが、出発や停車はスムーズで「今は自動運転中ですよね?」と確認してしまうほどだった。カーブや対向車とのすれ違いも難なくクリアし、約10分間の乗車中に不安を感じるような場面はなかった。町並みを楽しむにはうってつけと言える。
 ただ、路上駐車中の車両を追い越す場合は手動運転に切り替わり、そのたびに一時停止したため、もどかしさを感じた。この日は交通量が少なかったが、後続車両が「なぜ止まるのか」と戸惑うことも予想される。周囲のドライバーの理解を得るには、実証実験中であることをより分かりやすく伝える工夫も必要になりそうだ。
 自動運転技術は過疎化や少子高齢化といった課題が深刻な地方で、より一層高いニーズがあるとみられる。県は実証実験によって実用化に向けた課題を検証していく方針で、「地域の足」として定着できるか注目したい。

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