新型コロナ急拡大 救急に軽症者殺到「風邪症状は様子見て」

 新型コロナウイルスの感染急拡大を受け、静岡県内の救急外来に軽症の感染者が殺到し、緊急度の高い患者に迅速に対応できない事態になっている。軽症者は大半が入院に至らないといい、医療機関は「発熱などの風邪症状なら市販薬を使って経過観察してほしい」と、救急外来の適切な受診を訴える。県は29日、医療逼迫(ひっぱく)警報を発出した。

浜松医大付属病院の救急外来に来た新型コロナ患者(7月)
浜松医大付属病院の救急外来に来た新型コロナ患者(7月)

 「発熱や咽頭痛ですぐに病院に来る状況。これでは救急外来が回らない」。浜松医科大付属病院(浜松市東区)救急部の高橋善明医師は危機感をあらわにする。今月中旬以降、救急を利用するコロナ患者が急増した。10~26日の当該患者は108人。だが、そのうち86人は解熱剤の処方を受けるなどしてそのまま帰宅したのが実情だ。
 高橋医師によると、救急外来に自家用車で来院する患者が多い2次救急医療機関には、浜松医大付属病院より多くのコロナ患者が来ているとみられる。
 救急要請を受けた際、症状から緊急性がないと判断し、受け入れを断ることも多い。日中にかかりつけ医を受診できず、「不安だから」と来院する人は少なくないという。
 入院する感染者の大半は、基礎疾患のある高齢者。発熱や脱水症状の進行による状態の悪化、誤嚥(ごえん)性肺炎などを伴う人がほとんどで、高橋医師は「インフルエンザ流行期に高齢者の入院が相次ぐ状況と変わらない」と話す。
 県内では18~24日、53件の救急搬送困難事案が発生した。同病院でも心筋梗塞の患者を受け入れられなかったことがあり、高橋医師は「今後、重症患者が病院にたどり着く前に救急車内で亡くなるケースが出てもおかしくない」と危惧する。
 松山幸弘院長は「企業や学校が診断を求める状況も控えてもらいたい。風邪症状なら家で様子を見て救急医療を守ってほしい」と語気を強める。
 県は専門家会議の会合などを通じ、救急外来の逼迫は全県的な問題だとの認識を持っている。29日の記者会見で「発熱したらまずは市販薬で対応し、受診は平日の日中にお願いしたい」などと呼びかけた。

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