伐採街路樹に“新たな命”を 静岡市、官民で利活用実験

 役目を終えて伐採した街路樹の再利用を目指し、静岡市が官民連携の「社会実験」をスタートさせた。これまでは樹木を細かく粉砕し処分していたが、市内の木材加工会社からの提案を受け、家具や日用品への作り替えを模索している。市の担当者はSDGs(持続可能な開発目標)の推進とともに「形に残るものとして利活用できれば、住民の記憶や思い出の継承にもつながる」と期待する。

木の利活用に向けて仲間と意見を交わす金原隆之さん(右端)=静岡市駿河区向敷地
木の利活用に向けて仲間と意見を交わす金原隆之さん(右端)=静岡市駿河区向敷地
県庁本館前などに植えられていた樹木
県庁本館前などに植えられていた樹木
木の利活用に向けて仲間と意見を交わす金原隆之さん(右端)=静岡市駿河区向敷地
県庁本館前などに植えられていた樹木

 5月末から6月にかけて、県庁本館前(葵区)の街路樹のケヤキなど約160本を管理者の市が伐採した。腐朽や亀裂で倒木の恐れがあると判断したためだ。そのうち再利用できそうな樹木は現在、同市駿河区向敷地の木材加工会社「きんぱら」の敷地に置かれている。
 5月の新聞報道で街路樹伐採のニュースを知った同社会長の金原隆之さん(81)が「街路樹は市民のもの。市民に還元できないか」と市に掛け合い、無償での再利用策の検討を申し出た。市は順次、市内の危険な街路樹を撤去する予定で、伐採樹木は増える見込み。金原さんによると、樹木が乾燥し、木材として利用できるまで3年ほどかかるといい、この間に有効な活用方法の確立を目指す。
 市内の大工や家具職人、デザイナーら有志約20人が集まり、伐採された街路樹から何を作ることができるか話し合いを重ねている。椅子などの家具やエコバッグ、箸などの日用品のほか、自然体験施設で活用するアイデアも出てきた。指物師の大間晁さんは「いかに素材を生かした作品にして残すかが大切」と話す。

 ■危険な木 本年度から撤去
 静岡市が維持管理する街路樹は約2万本ある。道路利用者や道路沿いの住宅の安全確保のため、2022年度から傷んだ街路樹の伐採を始めた。
 伐採に先立ち、21年度に樹木医による劣化診断に着手。高さ3メートル以上、幹の周囲90センチ以上の約6000本を対象に、樹木の腐朽や空洞の有無などを調べる。
 21年度は、診断した約1600本のうち1割に相当する160本が伐採対象となり、22年5月末から約1カ月かけて伐採した。引き続き、残り4400本の診断を進め、危険と診断された街路樹は撤去する。
 市は従来、切った樹木を粉砕処分してきたが、今回の伐採事業は数百本単位が見込まれ、伐採費用や処分費がかさむことから、新たな利活用策を検討していた。

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