記者コラム「清流」 富士の麓で暮らして

 夏山を迎えた富士山は、赤茶けた火山灰土から視線を落とすと緑の樹林帯につながり、すそ野には街並みと工場の煙突が連なる。
 日本最高峰から海抜0メートルまで見える富士市からの景色は世界文化遺産の縮図だ。3年半を過ごした今、目を凝らせば、霊峰に有形無形の影響を受けた人々の営みが分かる。
 人口県内3位の産業都市。それは一面に過ぎず、豊富な水資源や自然、宿場や寺社の歴史・文化、地域住民の温かさに魅せられた。着任当初、富士の文化を知ることを“頂”に据えたが、まだ5合目にも達していないだろう。
 産業に陰りが見え、コロナ禍で街も停滞する。それでも富士の本質的な魅力を信じ、奮闘する人々に数多く出会った。地域を愛する人財がいる限り、街の未来は明るい。

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