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ウクライナへ届け、バリトンの響き 歌手鈴木さん(浜松出身)ら動画配信

 フィンランドの詩人エイノ・レイノが105年前、ウクライナに向けて書いた詩を浜松市出身のバリトン歌手鈴木啓之さん(46)らが日本語の歌にしてユーチューブで配信している。鈴木さんは「ウクライナはひとりじゃないと伝えたい」と話す。

ユーチューブで配信している動画で、ウクライナに向けて歌唱するバリトン歌手の鈴木啓之さん(右)(本人提供)
ユーチューブで配信している動画で、ウクライナに向けて歌唱するバリトン歌手の鈴木啓之さん(右)(本人提供)


 第1次世界大戦末期、フィンランドやバルト3国の民衆がロシアから独立しようと立ち上がった。レイノは共にロシアからの独立を目指すウクライナに向けて「Terve Ukraina(君にごあいさつ、ウクライナ)」を書いた。
 ロシアによるウクライナ侵攻後、この詩が偶然、フィンランド在住の翻訳家大倉純一郎さん(73)の目に留まった。「ウクライナのために何かしなくては」と衝動に駆られ、日本語訳に取り組んだ。大倉さんは「翻訳しただけでは何の役にも立たない。多くの人に伝えたい」と思い立ち、曲にして発表することを鈴木さんに託した。
 鈴木さんが声を掛け、仕事仲間の作曲家下原陸人さん(29)が曲を付けた。下原さんは広島県出身。幼い頃から学んできた「誰かを憎まず、ただ平和を祈る」という気持ちを込めて、曲の一部にウクライナの国歌を取り入れた。
 ピアニスト玉田裕人さん(34)の伴奏で、フィンランドで声楽を学んだ鈴木さんが歌唱し、ウクライナ語、フィンランド語、日本語、英語、ロシア語の字幕を付けた動画を制作。レイノが詩を書いた6月29日に合わせて配信を開始した。
 鈴木さんは「約100年前のような悲しい出来事が繰り返されてしまった。動画を見て自分事のように感じてもらえれば」と熱く語った。
 動画の検索は「君にごあいさつ、ウクライナ」など。
 (社会部・島田莉菜)

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