JR東海配布冊子「誤解与える」 有識者会議、委員や県懸念 リニア大井川水問題

 20日に静岡県庁で開かれたリニア中央新幹線南アルプストンネル工事に伴う大井川水問題を議論する県有識者会議の地質構造・水資源専門部会で、JR東海が県民などからの意見募集のため13日に配布を始めた冊子を巡り、委員から「既に議論がし尽くされたような誤解を与える」などの指摘が出た。県は「国土交通省の専門家会議が中間報告で求めた『双方向のコミュニケーション』に沿うものではない」と懸念を示した。

JR東海が配布している冊子。静岡県は「解析に関する不確実性の記述が不十分」などと指摘した
JR東海が配布している冊子。静岡県は「解析に関する不確実性の記述が不十分」などと指摘した
JR東海が配布している冊子。静岡県は「解析に関する不確実性の記述が不十分」などと指摘した

 塩坂邦雄委員(サイエンス技師長)は「専門部会の質問に明確な回答がないのに、こうした冊子が出るのは訳が分からない」と疑問を呈した。森下祐一部会長(静岡大客員教授)も「非常に違和感を持った」として、田代ダム取水抑制案の課題に触れていない内容の冊子を、JRが部会開催前に公表した点を、「不信感を植え付けることにしかならない」と批判した。
 県が流域市町や利水者から集めた意見では「地域の不安を受け止める姿勢の表れ」などの評価があった一方、「JRが一方的に行うもの」「決定事項のような印象を与える」などの意見もあったという。難波喬司県理事は「JRが冊子で説明するのは良いこと」としつつ、河川流量を巡る解析の不確実性や田代ダム取水抑制案の議論に関する記述が不十分だと指摘。「誤解や印象操作、楽観論や不安論をあおる可能性がある」と懸念を示した。
 冊子は大井川の水資源に関する同社の取り組みを紹介するとして、大井川流域など県内11駅で配布し、同社のウェブページでも公表した。JRの沢田尚夫中央新幹線推進本部副本部長は部会後に記者団に対応を問われ、「意見を質問の回答に生かしたい。冊子の更新も検討する」と述べた。
 (政治部・杉崎素子)

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