大自在(7月16日)トリニティ核実験

 米国西部ニューメキシコ州アラモード近郊のトリニティ・サイト。1945年のきょう、史上初の核実験が行われた。広島、長崎に原爆が投下される約3週間前だった。
 ソフトボール大のプルトニウムの塊を火薬の爆発で圧縮し、核分裂の連鎖反応が起こる臨界状態をつくって大爆発を起こした。核を用いた大量破壊兵器を人類が手にした瞬間だった。トリニティの命名は、キリスト教の三位一体を表したとの説明など諸説あるようだ。
 サイトと周辺は、後に米軍のミサイル実験場となる。核実験から75年を迎えた2020年、記念式典が開かれ、当時のトランプ米大統領は声明を発表した。「実験は第2次世界大戦の終結を促した。すばらしい偉業だ」。
 武力でウクライナを侵略するロシアのプーチン大統領は、核兵器による威嚇をはばからない。地球を何度も壊滅させて余りある量の核兵器。その発射ボタンを手にする大国のリーダーたちは、核抑止力が自国や同盟国の利益と信じて疑わない。
 トリニティ核実験は人工の鉱物を生成したことでも知られる。「トリニタイト」と称され、実験で高温にさらされた砂漠の砂が溶け、再び固まった物質。主成分はケイ素で、淡い緑色のものが多いという。富士宮市山宮にある奇石博物館は今月、トリニタイトを特別展示している。
 石は地球の過去と現在をつなぐ。博物館は活動理念で「多くの生物の繁栄と絶滅を通じ、環境を守ることの大切さを訴えます」と掲げている。原爆開発で生じた鉱物は、来館者に何を伝えているのだろう。

いい茶0
あなたの静岡新聞 アプリ
地域再生大賞