企業の知財保護、具体策は 「経済安全保障」実効性向上 議論聞こえず【参院選しずおか】

 重要技術の海外流出を防いで国内産業を守るため、岸田政権が掲げている経済安全保障施策。5月に経済安全保障推進法が成立したばかりだが、参院選では各候補者から実効性を高めるための具体的な意見がほとんど聞かれない。県内では特許取得などを支援する独立行政法人工業所有権情報・研修館(INPIT)と金融機関などが連携し、中小企業の知的財産を保護する動きが加速している。

知財保護に向けて里見力社長(左)と打ち合わせするINPITと静清信用金庫の職員ら=6月下旬、静岡市葵区のサトミ製作所
知財保護に向けて里見力社長(左)と打ち合わせするINPITと静清信用金庫の職員ら=6月下旬、静岡市葵区のサトミ製作所

 製紙用機械を製造する静岡市葵区小瀬戸のサトミ製作所(里見力社長)で6月末、静清信用金庫や県信用保証協会、INPIT県知財総合支援窓口の職員を交えた打ち合わせが行われた。INPIT窓口支援担当者の宮枝清美さんは「特許は取得すると、製造技術も原則的に公開されてしまう。あえて取得せず、秘匿した方がいい場合もある」と指摘。里見社長は専門家の意外な助言に驚いた表情で聞き入った。
 同社は現在、植物由来の新素材セルロースナノファイバー(CNF)の量産化機械を、京都大と合同で開発している。鋼鉄の5分の1の重量で5倍以上の強度があるなどの特性を持つCNF。量産化が成功すれば、現状で1キロ4千円とされる価格が抑えられ、用途拡大も期待される。半面、CNFは研究開発に世界中がしのぎを削る分野。グローバル経済が進む中、技術漏えいは国益の損失にもつながりかねない。
 こうした情勢を踏まえ、INPIT県知財総合支援窓口は昨年から、地域金融機関や県信用保証協会と包括連携協定を締結した。取引先企業への情報提供で連携し、知財保護を後押しする。同協会は「国内企業の技術が海外で盗用される被害は増えている。専門機関が介在し、戦略的に管理する重要性が高まっている」(経営支援統括課)との認識を示す。
 同社も過去に、特許を取得した別製品が海外企業に模倣された経験があるという。里見社長は「中小企業だけで知財を守るには限界がある。私たちが安心して開発にまい進し、努力が報われる環境であってほしい」と政治に求める。

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