熱海土石流「発生者に責任」「追跡を」 砂防法には触れず 8候補アンケート【参院選しずおか】

 参院選静岡選挙区(改選数2)の候補者8人に、熱海市伊豆山の大規模土石流の教訓を踏まえて、盛り土(積み上げた残土)崩落事故の再発防止と復興支援の観点から必要だと考える施策をアンケートした。再発防止としては残土を発生させる業者の責任に着目した対応を求める回答が多かったが、砂防法の問題はどの候補も取り上げていない。
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 山崎真之輔氏(無所属現)は盛り土規制法制定後も残された課題として、土砂の発生者責任が明記されていないことや土砂の環境基準が定められていないことを挙げた。
 残土を追跡できる仕組みの必要性に言及したのは平山佐知子氏(無所属現)。公共事業や民間事業に関係なく残土を最終処分まで把握するシステム作りが必要だと指摘。鈴木千佳氏(共産新)も、残土の発生者に最終処分までの責任を持たせる必要性を強調した。
 若林洋平氏(自民新)は不法盛り土対策に加えてメガソーラーなど太陽光発電施設乱開発の問題に触れ、災害情報の伝達システムの在り方も記した。
 舟橋夢人氏(N党新)は土砂を捨てる場所の確保が必要だとした。山本貴史氏(諸派新)は監視カメラ設置、船川淳志氏(無所属新)はコミュニティーの再構築をそれぞれ挙げ、堀川圭輔氏(N党新)は徹底した情報公開を求めるとした。
 被災者支援の在り方に関しては、鈴木氏が現場の声を踏まえて使いやすい支援制度に改善するよう提案。舟橋氏は仮設住宅の代わりに再建住宅を提供するアイデアを掲げた。
 

熱海土石流の教訓を踏まえて盛り土規制法が成立しましたが、再発防止を図るうえでこれに加えて何が最も必要と思いますか。


 ※届け出順
 舟橋夢人氏 N党新
 産廃土砂の捨てる場所確保。いわゆる産廃土砂を捨てる場所がないから不法に投棄しようとする。幸い静岡県は海に面しているので、海を埋め立ててそこに土地を作ると、東京の夢の島のように発展する。固定資産税が増え、企業が誘致でき、産業が発達し、人口も増える。

 鈴木千佳氏 共産新
 抜け穴のない具体策が不可欠。規制区域を限定せず、許可にあたっては環境アセスや住民等の意見聴取などを行うべき。建設残土の発生者に最終処分までの責任を持たせることも必要。リニア新幹線工事は大量に排出された残土を災害危険区域内の仮置き場に堆積させるなど問題だらけ。リスクを高めるリニア建設は中止すべき。

 山本貴史氏 諸派新
 監視カメラの設置やGPSを使った定期調査、通報システムの構築など。

 山崎真之輔氏 無所属現①国民推薦
 盛り土対策については予算委員会でも指摘し、無事に改正法が成立したが、いくつか積み残した課題がある。例えば、土砂の発生者責任が明記されていないことや、盛り土に使われる土砂の環境基準が定められていないこと、自治体への財政支援が担保されていないことなど。今後改良されるようさらなる制度の拡充を求めていく。

 若林洋平氏 自民新公明推薦
 第一に不法盛り土や山肌へのメガソーラー等、命の山を守る法整備をしっかり整えること。そしてハード面での災害対策はもとより、正確かつ迅速な情報伝達システムの再確認をすると同時に、情報を受ける側の意識を常に高めておく訓練と避難場所の再確認等の意識付けをしておくことが必要だと思う。

 平山佐知子氏 無所属現①
 建設発生土が現場から中間処理場に搬出された場合、その先の最終処分場などどこにどれだけ搬出されたのかが分からなくなってしまう。公共であれ民間であれ、工事現場から搬出される残土がどれだけ発生し、最終的にどこで処分されたのかを把握できるシステム作りが必要。

 堀川圭輔氏 N党新
 原因、責任など徹底した情報公開が求められていると感じる。

 船川淳志氏 無所属新
 問題の根底には地域社会の崩壊と、その隙を突く自己利益しか考えない人々、それに対応できない行政の構造が折り重なっていたと見ている。再発防止の法整備は必要だが十分ではない。最も重要なのは「自分の行為が他者にどんな影響を与えるか」という基本から教育をやり直し、デジタル時代のコミュニティー活動を構築すること。
 

熱海市伊豆山の復興や離れて暮らす被災者が安心して戻ってくるためにどんな支援が最も重要だと考えますか。


 舟橋夢人氏
 復興事業での雇用。戻ってこられない理由は仕事があるかどうか、が重要になる。そのため、復興事業を計画し、雇用を創出する。仕事があれば、戻ってくることが可能となると考える。仮設住宅の代わりに再建住宅を提供し、定住を促進する。

 鈴木千佳氏
 被災者の住宅、生業が再建し、人が戻ってこそ、地域の復興といえる。道路や建物の復旧は、被災者の生活再建の手段にすぎない。被災者や被災地の生活再建、復旧・復興対策は、既存の制度の押しつけではなく、現場の声を反映させ、使い勝手のよい支援制度にすることが必要。国は必要な財源を確保し支えるようにすべき。

 山本貴史氏
 残土の処理など、まずは土石流がさらに起こらないような対策を講じ、住民の不安を解消すること。経済的な支援も必要。

 山崎真之輔氏
 被災者が安心して伊豆山に戻るには、安全な土地の確保と住宅再建に対して住民への金銭的な支援が必要。住民の意見を反映した新しいまちづくりについて、熱海市が策定する基本計画を基に、被災者が早期に戻り住むことができ、被災者に寄り添った支援について国として何をするのかを明確にする必要がある。

 若林洋平氏
 シンプルだが、被災者の生活再建が最重要であると思う。政府や行政が行う大規模復興再建はもちろんだが、まずは被災者が普通の日常を取り戻せるような支援も同時に、なおかつ継続的に行うことが重要と考える。

 平山佐知子氏
 まずは、残っている盛り土の撤去や砂防施設・崩落防止措置を進めるべき。その上で逢初(あいぞめ)川の河川整備が必要。歴史あるまちで区画整理は非常に難しいが、二度と同じような被害を出さないためにも、住民の皆さんが納得できる復興案・再開発案をきめ細かく策定すべき。

 堀川圭輔氏
 リニア問題同様にメガソーラーと土石流の関連性など不安に思っている方々も大勢いる。リニア問題と同様に扱うべきだ。

 船川淳志氏
 まずは徹底的に地質調査をやり直し、AIで降雨や水の流れなどの動的変化を捉えたシミュレーションを提示する。それに基づき居住可能か否かを判断する。被災者の戻りたい思いを尊重しつつ、安全安心の検証が必要。バブルの際の開発優先のひずみが全国に広がった。こうした被災者への補償を手厚くできる法整備も必要。

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