記者コラム「清流」 水辺のない場所に住めない

 都内に下宿した学生時代、川のせせらぎがないことを息苦しく思い「都内近郊 清流」で検索したことがある。最上部に表示されたのは、故郷・三島市の源兵衛川。「水辺のない場所に住めない」と気づき、地元就職を選んだ。
 12日、同市が舞台の学生向けワークショップで制作された短編映画「しゃぎり」上映会に足を運んだ。街中を流れる川と富士山の情景、しゃぎりの音色、「富士山見ると、時々、不安になるの」というせりふに、胸がざわついた。
 学生と題材を討議して脚本を書いた同市出身の藤森圭太郎監督は「三島の人は異常に水を意識する。街中の川は、ここが富士山の溶岩が流れた末端の地であることを忘れさせない」と指摘した。地元と自己との距離を揺さぶるような、不思議な作品だった。
 

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