テーマ : 編集部セレクト

大崎事件棄却決定 袴田さん姉や元裁判官ら 法改正求める声強く

 「大崎事件ほど再審制度の不備に翻弄(ほんろう)された事件はない」―。22日に鹿児島地裁で第4次再審請求を棄却された原口アヤ子さん(95)は、過去に3度再審開始が認められたものの、その都度検察側の不服申し立てで取り消された経緯がある。弁護団事務局長の鴨志田祐美弁護士は強調する。「最初の再審開始決定は20年前。検察が抗告しなかったら、20年前に終わっていたはずだ」。当事者だけでなく元裁判官たちからも、規定が乏しい再審法(刑事訴訟法の第4編再審)の早期改正を求める声が上がる。

大崎事件の再審請求棄却決定に抗議し、法整備の必要性を指摘する元裁判官たち=22日午後、都内
大崎事件の再審請求棄却決定に抗議し、法整備の必要性を指摘する元裁判官たち=22日午後、都内

 「再審妨害」と「再審格差」。ともに鴨志田弁護士が生み出した言葉だ。前者は、再審開始決定に対して徹底的に上訴する検察当局への批判。後者は、ルールが乏しいが故に担当する裁判官の姿勢次第で審理に差が生じている現状を指す。
 鴨志田弁護士は「2022年を再審法改正元年に」と常々口にしてきた。死刑囚ながら釈放された元プロボクサー袴田巌さん(86)のほか、滋賀県日野町で発生した強盗殺人事件「日野町事件」の元受刑者遺族が申し立てた再審請求について、裁判所が可否の判断を示す時期が近づいている。大崎事件を含めた共通点として、いずれも再審開始決定が出たのに検察側が上訴した▽証拠開示が再審開始の上で重要な役割を果たした―ことなどを列挙する。
 「行ったり来たり。これは制度が悪い」。原口さんの再審請求が棄却された22日、袴田さんの姉ひで子さん(89)は再審開始決定が出ても即座に確定しない現実を憂えた。「(上訴できる)制度がある以上、検察官を恨んでも仕方ない。制度を変えなきゃ」。現状は当事者が亡くなるのを待つための制度に映るという。
 元裁判官10人は棄却決定を「旧証拠との総合評価を全くしていない」と批判する声明を公表した。都内で記者会見した大崎事件弁護団の木谷明元東京高裁判事は、再審法に証拠開示の規定がないことなど「つくづく大きな不備がある」と指摘した。
 14年に静岡地裁で袴田さんの再審開始決定を書いた村山浩昭元大阪高裁判事は、検察側の上訴が禁じられていない点を念頭に「検察庁は組織。法律が変わらないと、不服申し立てするという対応は変わらないのでは。本来救済されるべき人が(審理を)引き延ばされ、命が尽きてしまうことになれば大変な問題。国会議員の方は人権問題と受け止めてほしい」と訴えた。

編集部セレクトの記事一覧

他の追っかけを読む
地域再生大賞