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社説(6月22日)参院選22日公示 危機の連鎖を断ち切れ

 第26回参院選(7月10日投開票)はきょう、公示される。新型コロナウイルスの感染拡大で打撃を受けた国民の暮らしは回復基調だが、ウクライナ危機に伴う世界経済の変調で物価高が進む。安全保障体制の再構築は喫緊の課題だ。
 岸田文雄政権がこの参院選に勝利すれば、国政選挙の予定がなく安定した政権運営ができる「黄金の3年」を手にする。政権を信任するのか、野党勢力に力を与えるのか。6年に及ぶ参院議員の任期も加味し、有権者は1票の選択をしたい。
 コロナ禍で与野党がバラマキに走り、積み上がる借金が財政の手足を縛っている。手詰まりの円安対策は輸入物価の高騰を招き、インフレが国民生活を覆う。国際協調の不全は自由貿易で成長してきた日本経済に痛手だ。
 国をどこに導き、暮らしをいかに立て直すのか。立候補者はその決意を真摯[しんし]に語り、危機の連鎖を断ち切る処方箋を示さなければならない。
 各党公約が出そろい争点は絞られてきた。個人消費に冷や水を浴びせる物価高騰の対策、防衛力強化と安全保障の立て直し、そしてコロナ禍からの経済再生だ。内政、外交の両面から、広範な議論と対策が欠かせない。憲法改正と原発再稼働問題も主張が分かれ、各党や各立候補者の政策を注視する必要がある。
 静岡選挙区(改選数2)は7人が出馬に向け動いてきた。現職2人が無所属で立ち、自民党は新人1人が確実な議席確保を狙う。共産党の新人1人、NHK党の新人2人、諸派の新人1人が出馬する。野党第1党の立憲民主は立候補者を立てない。野党共闘は限定的で、全国の政治情勢の縮図のような選挙区になる。
 製造業を軸にした本県産業は、国境を越えたサプライチェーン(供給網)の不全や半導体不足の影響をもろに受けている。企業立地は高い水準で推移しているものの、地域経済への波及効果が高い観光業は回復途上だ。浜岡原発の再稼働問題や、リニア中央新幹線の南アルプストンネル工事に対する各立候補者の見解に耳を澄ませたい。
 岸田政権は比較的高水準の支持率で参院選に突入する。大企業や富裕層の富を国民にしたたり落とす政策「トリクルダウン」の限界が露呈し、格差が拡大した反省から、岸田首相は自民党総裁選で「現場の悩みや苦しみが政治に届いていないという国民の声があふれている」と語った。「聞く力」を打ちだしたことが支持率の維持に奏功している。ただ、聞く力のアピールは果断な政策判断の回避と背中合わせだ。
 政策は財源の裏付けがあってこそだ。将来世代への借金のつけ回しは許されず、各党は負担増を語ることから逃げてはならない。
 先の通常国会で政府新規提出法案の成立率は100%だった。1996年以来という。与党と野党の境目は曖昧になり、参院選後の政局の流動化を予測する声がある。政権の問題点をあぶり出す役割を放棄するなら、健全な野党とは言えない。この参院選は「野党とは何か」を問う選挙にもなろう。
 ウクライナ危機で、強権主義的大国が隣国を侵略する蛮行を目の当たりにした。民主主義が要する手間と時間は、権力者の暴走を阻止するためでもある。防衛力増強の問題は与野党が混沌[こんとん]とする国際情勢を精査し、判断しなければならない。
 コロナ禍とウクライナ危機は、日本経済の脆弱[ぜいじゃく]さを浮き彫りにした。ただ、政治が国民に我慢を強いるだけでは責任の放棄だ。危機を脱し、成長を切り開く政策も競ってほしい。社会経済活動を止めずに新型コロナ感染を乗り切る対策は、科学的知見に裏付けされた政府の強いリーダーシップと、自治体との柔軟な連携も必要だ。解散のない参院議員こそ腰を据えて取り組むべきだ。

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