赤いビル解体始まる 濁流直撃、被害の象徴 熱海土石流

 熱海市伊豆山で昨年7月に発生した大規模土石流で、濁流が直撃する動画が交流サイトで拡散され、土石流被害の象徴的な存在となっていた「赤いビル」の解体工事が21日、本格的に始まった。住人で市議の高橋幸雄さん(66)は「悲しさや悔しさはあるが、どうあがいても残せない。今は前向きに考えるしかない」と言葉を絞り出した。

重機で解体される丸越酒店=21日午前10時18分、熱海市伊豆山
重機で解体される丸越酒店=21日午前10時18分、熱海市伊豆山
重機で解体される丸越酒店=21日午前10時19分、熱海市伊豆山
重機で解体される丸越酒店=21日午前10時19分、熱海市伊豆山
重機で解体される丸越酒店=21日午前10時18分、熱海市伊豆山
重機で解体される丸越酒店=21日午前10時19分、熱海市伊豆山

 ビルは鉄筋コンクリート造り4階建て店舗兼住宅の「丸越酒店」。昨年7月3日午前10時55分ごろ、逢初(あいぞめ)川上流部から流れ下った大量の土砂が直撃し、3階以下に土砂が流入。「大規模半壊」と判定された。解体費用は公費で賄われる。
 高橋さんは現在、神奈川県湯河原町のみなし仮設住宅で暮らす。この日は工事が始まる前に、建物の中に日本酒をまいて36年にわたり家族を支えたわが家に感謝した。地域の復旧には数年かかると見られる。「戻れれば戻りたい。時間との闘いだ」と語り、重機で建物が取り壊される様子を静かに見守った。
 家屋の公費解体は被災者の経済的負担の軽減などを目的にした措置。市によると半壊以上の89棟が対象で、これまでに57棟の申請を受理した。市は来年1月末までに全体の工事完了を目指す。

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