静岡空襲“知る”「日赤前のクスノキ」次代へ 挿し木苗、静岡・竜南小に植樹 平和学ぶきっかけに

 約2000人が犠牲となった1945年6月の静岡空襲で焼けながらも3年後に芽吹いた、静岡市葵区の静岡赤十字病院前にある「日赤前のクスノキ」が、静岡平和資料館をつくる会(田中文雄運営委員長)によって挿し木苗として育てられ、空襲から77年となる20日、静岡市葵区の竜南小に寄贈された。成長したのは挿し木の2%とわずかで、移植先探しも難航した。会員の悲願だった「子どもたちから見える場所」に、ようやく根を下ろすことになった。

挿し木で育てたクスノキを植樹する児童=静岡市葵区の竜南小
挿し木で育てたクスノキを植樹する児童=静岡市葵区の竜南小


 「この木は長生きできるけれど、世の中が平和でなければ生きられない。今日から皆さんに託します」
 同校で開かれた寄贈式。自宅で育ててきた会員の真田喜代美さん(74)=静岡市清水区=が6年生に呼びかけた。「奇跡のクスノキ」と言われた日赤前のクスノキの樹勢が弱まったことを受け、会は2018年、逸話を後世に残そうと枝を取って約90本の挿し木を作り、真田さんら会員3人が自宅で育てた。順調に育った2本のうち貴重な1本を、同校に贈った。
 学校敷地内の樹木の植栽エリアで日当たりが良く、校庭からよく見える場所が用意され、会員が見守る中、児童が高さ60センチの苗木の根元に土をかぶせた。沢田和虎さん(12)は「どんどん大きくなって下級生が静岡空襲を知るきっかけをつくっていってほしい」と話した。
 会は昨夏から苗木2本の移植先探しを始めたが、巨樹になるために根を大きく張って育つことや、管理する上での個別の事情などが壁になった。自治会や大学が「戦禍を風化させないシンボルに」と関心を寄せたものの、公園や学校など候補地が浮上しては頓挫する中で、平和教育に取り組む竜南小が「学びにつなげたい」と手を挙げた。真田さんは「やっと居場所を見つけた。普段から児童の目に止まる素敵な場所で、感無量」と話した。

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