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社会を変える 今こそ声を 日本若者協議会代表理事・室橋祐貴さん【決める、未来 若者×若者ー1票の価値とは②】

 6月上旬、衆議院第1議員会館。一般社団法人「日本若者協議会」が、主要6政党の国会議員と大学生、若者を招いた討論会を開き、オンラインで公開した。なぜこういう機会を設けるのか。社会部の大沢諒記者(27)が、代表理事の室橋祐貴さん(33)を訪ねた。

公開討論会で司会を務める室橋祐貴さん=東京都内
公開討論会で司会を務める室橋祐貴さん=東京都内

 「自分たちの子どもが社会人になる20、30年後の社会保障はどうなっているのか」。室橋さんの進行で、若者側が国会議員に向けて活発に質問していた。
 「上の世代や政治家はもっと若い人の声に耳を傾けるべきだ」と室橋さんは言う。協議会は2015年の設立後、国会議員らに労働や社会保障、ジェンダー、教育などの政策を提言する討論会を数十回重ねてきた。
 共感した。若者は減り、「声なき声」になろうとしている。今こそ声を上げないといけないと感じていた。7年前に選挙権を得てから投票を欠かしたことはないが、同世代の友人から「投票なんて無意味」「誰が政治家になっても一緒」と後ろ向きな声も聞く。
 若者が政治に関心が低い理由は何か。室橋さんは「地域や学校内の問題と向き合って何かを解決した経験が少ないと、国の政治に関心が向くこともないのではないか」との見解だ。「日本では、個人の意見を社会が尊重する主権者教育より、社会や組織のルールを個人が尊重する道徳教育が大事にされている」
 欧米では主権者教育が普及し、個人の人権が重視される社会のため、若者の政治的関心も高い。一方、日本では「身近な課題に疑問を抱き、自ら解決策を実行する習慣がない。社会の一員としての意識が乏しく、自分たちで社会を変えるという発想がない」と室橋さんは話す。
 同協議会は、子どもを虐待や差別から守り、意見を述べる権利を尊重する「こども基本法」の成立に向け、署名、要望活動を展開してきた。昨年1月には文部科学省に対し、学校に子ども一人一人の意見を尊重する環境づくりを求める提言も提出している。同法は、15日の参院本会議で可決・成立した。「『子どもも学校のルールなどの意思決定に加わるべきだ』と大々的に訴えたのは自分たちが初めてだった。ようやく主権者教育が『実践していくもの』にシフトしてきた」と手応えを語る。
 日本の若者も一人一人が社会を変える一員であると自覚し、貴重な1票で態度を示すことが大切だろう。

 むろはし・ゆうき 神奈川県出身。慶応大経済学部卒。ニュース配信サイト「ヤフーニュース」で若者や選挙などをテーマにした論評を執筆している。専門・関心領域は政策決定過程、デジタルガバメント、社会保障、財政など。東京都品川区在住。

 〈取材後記〉自分が通っていた高校で当時、頭髪検査の廃止を求める署名活動があった。教員は誰1人として協力せず、実現に至らなかった。
 自分が理不尽だと思うルールを変えることができたという実体験を持つ人は、日本では少数派なのではないか。頭髪検査廃止の署名は、ルールを重視する教員や保護者が少しでも理解を示してくれれば、実現していたのかもしれないと思う。
 室橋さんは「若者の声に耳を傾けてほしい」と訴えた。少子化や就職難などの課題は、若者世代だけでは解決できない。他の世代が歩み寄る姿勢を示せば、政治への距離感は縮まるかもしれない。
 〈記者略歴〉おおさわ・りょう この春、デーリー東北新聞社(青森県)を退職し、静岡新聞社に中途入社。神奈川県出身。

 ■投票率向上キャンペーン「決める、未来」
 静岡新聞社は、若年層の投票率が低い状況を社会的な課題と受け止め、若者投票率向上キャンペーン「決める、未来」を展開します。「なぜ若者はあまり投票に行きたがらないのか」「どうしたら政治への関心や期待を高められるか」といった疑問への答えを探るため幅広い人々に取材し、新たな視点の企画を掲載していきます。

 

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