記者コラム「清流」 大都市住民の「人ごと」

 「結局はみんな、人ごとだったのではないか」
 熱海市伊豆山の大規模土石流の起点にあった残土処分場(盛り土)の関連取材で千葉県を訪ねた際、人災はなぜ繰り返すのかという問いに返ってきた答えだ。残土問題に詳しい女子栄養大名誉教授の佐久間充さん(85)は「神奈川の土砂を他県に持ち出し、神奈川の人は何の関心も示さない」と嘆いていた。残土崩落事故は全国で相次いでいたのに大惨事を防げなかった。
 リニア中央新幹線工事に伴う大井川の水問題もしかり。対策を十分に議論しないまま、県内区間の早期着工を促すJR東海の社長や他県の知事の発言を聞くたびに、大都市の住民にとって、流域の懸念は「人ごと」なのだろうと感じる。人災は繰り返すのだと肝に銘じるしかないのか。
 (社会部・大橋弘典)

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