テーマ : 医療・健康

がん 適切な告知手法は 浜松医大生が聞き取り調査 患者「ショックで記憶なく」

 がん患者の半数以上が、医師から告知を受けた際の精神的ショックで治療方針などの説明内容を十分に記憶できていない可能性がある―。浜松医科大医学科4年の大石真帆さん(22)らが、患者への聞き取り調査の成果をまとめ、日本内科学会で発表した。患者が治療に自身の意思を反映させる機会の喪失を課題として挙げ、適切な告知手法を提案した。

研究成果について説明する大石真帆さん=6月上旬、浜松市東区の浜松医科大
研究成果について説明する大石真帆さん=6月上旬、浜松市東区の浜松医科大

 調査は2021年6~8月、卵巣がんの患者会の協力を得て患者14人にオンラインでインタビューし、告知を受けた際の様子などを尋ねた。
 告知時、強いストレスなどが原因で引き起こされる「解離性健忘」のような症状を呈した人は9人(64%)だった。覚えていない項目は、薬の名前や治療の開始時期などが多く、自宅や病室に戻るまでの記憶がなかった人も見られた。
 対策として、患者が納得した上で治療を受けられるように▽医師の書いたメモやパンフレットを渡す▽ソーシャルワーカーらによる精神的ケア体制を整備する―などの実施を挙げた。
 大石さんは1年生の時に講義でがん患者の話を聞き、告知の在り方に課題があると感じて研究を思い立った。指導に当たった同大の大磯義一郎教授(47)=医療法学=は「医師が思っているよりも、患者に説明が届いていない割合ははるかに高い印象。告知についてはこれまであまり研究されておらず、インフォームドコンセント(説明と同意)を実現する上でも課題になる分野だ」と語る。
 学会発表では、優秀演題賞を受賞した。大石さんは「患者さんの話を聞き、説明用パンフレットや心のケアに特化したマニュアルの整備が必要と感じた。今後は対象の疾病や患者数を広げてデータを集め、告知の課題を明らかにしたい」と意欲を見せる。

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