国交省生態系会議開始 JR社長「静岡工区の早期着工につながること期待」【大井川とリニア】

 JR東海の金子慎社長は9日、名古屋市で開いた定例記者会見で、リニア中央新幹線工事に伴う南アルプスの生態系への影響を議論する国土交通省専門家会議が8日に始まったことについて「静岡工区の早期着工につながることを期待し、(問題の解決に向けて)一生懸命対応する」と述べた。

 「会議の場を通じて地元の理解を得るということを、着工の前段でしなくてはいけない」と述べ、水資源の問題解決に加え、南アルプスの環境保全に関して地元の懸念を払拭(ふっしょく)することも、リニア静岡工区着工の前提になるとの認識を示した。
 8日に開かれた会議の初会合では、JR東海がこれまでに提示した水資源への影響を推定するデータについて、生態系への影響を検討する上で不十分との指摘が県有識者会議の専門部会委員を兼ねる委員を中心に挙がった。
 4月の県有識者会議専門部会で、県が求める「トンネル湧水の全量戻し」の代替案としてJR東海が示した東京電力田代ダム取水抑制案を巡り、利水関係者が渇水時に対応可能か不安視していることについては、金子社長は「成り立つだろうというのがざっとした認識」としつつ、根拠については「専門部会で答えるのが適切」と述べるにとどめた。

社長一問一答 地元理解 着工の前段で必要

 リニア大井川水問題に関する記者との主なやりとりは次の通り。
 ―南アルプスの生態系への影響を議論する国土交通省専門家会議が8日に始まった。受け止めは。
 「会議が円滑に進み、静岡工区の早期着工につながることを期待しつつ、一生懸命対応していく。しっかりとした解決を図らなければいけない問題だ」
 ―生態系に関する問題が解消されるまで、静岡工区は着工しないという認識か。
 「こういう(会議の)場を通じて地元の理解を得ていくということが、着工の前段でしなくてはいけないことだと理解している」
 ―田代ダム取水抑制案は渇水時でも対応できるのか。
 「解析の結果によると、静岡県側から山梨県側に流れる水は300万トンから500万トン。毎秒に直すと0・1トンか、せいぜい0・2トン。これくらいであれば、成り立つだろうというのがざっとした認識だが、細かいところは(県有識者会議の)専門部会で答えるのが適切だ」
 ―河川法で認められていない水利権の売買には当たらないのか。
 「取水の抑制をお願いすることで東京電力に損失が出るということであれば、なんらかの形で補償するという話になるかもしれないが、水利権を譲ってもらうとか、対価を払うという発想ではない。法律に抵触するお願いをしたという認識はない」


 

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