サクラエビ春漁 回復基調で終了 200トン超えは自主規制後初
サクラエビの春漁が8日夜、終了した。水揚げ量は約202トン(出漁計23回)で、昨年の春漁約141トンに比べて1・4倍に増えた。県桜えび漁業組合(実石正則組合長)が記録的な不漁を受けて2018年秋から自主規制を導入して以来、初の200トン超えとなり、静岡市清水区由比の漁業関係者は「漁獲量が回復基調を見せ、漁師の努力が実を結びつつある」と話した。
春漁は3月27日に解禁となったが、天候不順が続き当初は漁獲が伸びなかった。5月中旬に入ると一転して各日の漁獲量が10トンを超え、同16日には最多の約21トンを記録した。好天に恵まれたことで、静岡市清水区蒲原の富士川河川敷ではエビの天日干しで桜色に染まった光景が広がった。
9日早朝には由比漁港(同市清水区)と大井川港(焼津市)で春漁最後の競りが開かれた。競りを見守った実石組合長は春漁について「自主規制をしつつ漁獲が増えるということは、分母となる資源も増えているのではないか。次の秋漁が楽しみだ」と総括した。
■「富士川環境改善で好影響」 漁業者ら指摘
河口にサクラエビの産卵場がある富士川水系で2009年から続いた高分子凝集剤入り汚泥の不法投棄が19年に終わり、河川環境が大幅に改善したとの指摘が漁業者らから寄せられている。春漁に好影響を与えたとの見方が相次いでいる。
「天然アユのはみ跡が十数年ぶりに見られる」と話すのは本流に漁業権を持つ芝川漁協の関係者だ。川底の石と石の隙間に入り込んでいた粘着質の泥が少なくなり、ケイ藻が生えるようになった。中流域でも水生昆虫類が確認されている。
サクラエビ漁師によると春漁の主漁場は富士川の沖合で、河口にも群れがいた。「灰色だった川の泥が自然の茶色に戻ってきた」と話す。県水産資源課も「回復初期からさらに進み、回復基調になった」と指摘する。
由比港漁協の宮原淳一組合長は「川がきれいになり、本来の海を取り戻しつつある。人間ができることについては今後も取り組むつもりだ」と話した。