上流域の影響評価必要 国交省生態系会議 JR資料の改善指導も要求【大井川とリニア】
リニア中央新幹線工事に伴う南アルプスの生態系への影響について協議した8日の国土交通省の専門家会議では、先行する大井川の水資源に関する会議で議論されなかった上流域の地下水や表流水への影響評価が必要だとの指摘が複数あった。県の専門部会メンバーを兼ねる委員は、JR東海が同部会で示した資料が不十分だとし、専門家会議として改善を指導する必要があると強調した。

大東憲二委員は、水資源の議論で静岡市の流量予測を採用した経緯に触れ、JR東海の予測だけを根拠に議論しないよう提案。「トンネルを掘った時に地表の水がどんな影響を受けるかはっきりしなければ、生態系への影響があるかないか、話がかみ合わなくなる」と丁寧な議論を求めた。中村太士座長も「地下水位低下に伴って(地表の)水がどうなるか非常に心配している」と懸念を示した。
県専門部会委員を兼ねる板井隆彦委員は、県部会に示したJR東海の流量予測を疑問視。根拠となる科学的データの資料が不十分だとの認識を示した。
委員からは、数値解析の限界を指摘する声や、懸念される生態系リスクと対策の明示を求める意見もあった。オブザーバーとして参加したJR東海の宇野護副社長は「会議が円滑に進むよう、真摯(しんし)に対応していく」と述べた。
■県会議の進展期待 難波県理事
国土交通省専門家会議にオブザーバーの立場で参加した難波喬司県理事は、国交省が会議の結論を出す期限を示さなかったことについて「丁寧な議論を進める上で歓迎するべきこと」と評価した。委員とJR東海の議論がかみ合わず、膠着(こうちゃく)状態にある県有識者会議の議論が進展する糸口になることに期待を寄せた。
環境省がオブザーバーの立場で会議に関わっていることに関しては「2014年(6月)の環境影響評価書で環境大臣が出した意見に対し、JR東海は十分な追加調査を行っていない」と指摘。同省に対し、会議へ積極的に関与することでJR東海を指導するよう求めた。