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近く現地視察、意見交換へ 国交省生態系会議【大井川とリニア】

 リニア中央新幹線工事に伴う南アルプスの生態系への影響について協議する国土交通省専門家会議は8日、都内で初会合を開き、議論のテーマをどう絞り込むかについて協議した。委員からは「地元住民が何を心配しているのか踏まえることが重要だ」との指摘が相次ぎ、近く現地を視察し、意見交換の場を設けることを決めた。

国土交通省専門家会議終了後、記者の質問に答える難波喬司県理事=8日午後、都内
国土交通省専門家会議終了後、記者の質問に答える難波喬司県理事=8日午後、都内
国土交通省専門家会議が始まる前、委員にあいさつする難波喬司県理事(中央)ら県関係者=8日午前、都内
国土交通省専門家会議が始まる前、委員にあいさつする難波喬司県理事(中央)ら県関係者=8日午前、都内
国土交通省専門家会議終了後、記者の質問に答える難波喬司県理事=8日午後、都内
国土交通省専門家会議が始まる前、委員にあいさつする難波喬司県理事(中央)ら県関係者=8日午前、都内

 事務局を務める国交省鉄道局は、議論の内容を重視し、結論を出す期限にこだわらない考えを示した。事務局側で論点を示さず、委員の議論を通じて整理する考えも強調した。水資源について議論したこれまでの会議では、事務局側が「トンネル湧水の全量戻し」と「中下流域の地下水への影響」の2点を論点として示していた。
 座長に選ばれた北海道大教授の中村太士委員(生態系管理学)は「地元の意見をしっかりと聞きながら、よりいい方向に(議論を)進められれば」と述べた。県有識者会議の委員も務める静岡大客員教授の増沢武弘委員(植物生態学)は地元が懸念していることの一つとして、「お花畑」として知られる高山植物への影響を挙げた。
 意見を聞く相手について、鉄道局は会議終了後の取材に想定を明らかにせず、「委員と相談して決める」と述べるにとどめた。会議に参加した難波喬司県理事は会議後、「貴重な自然が残る南アルプスは人類共有の財産」と話し、地元の意向に限定せず、多様な観点から保全の在り方が検討されるべきだとの考えを示した。
 南アルプスの生態系に関する議論は、県有識者会議の生物多様性専門部会で先行していることから、同部会での議論経過や課題について県から確認することも申し合わせた。
 鉄道局は今後、生態学の専門家を委員に追加する考えも明らかにした。リニア南アルプスルートを採択した国交省交通政策審議会小委員会で委員を務めた中村氏が座長を務めることについては「高い見識を持ち、当時も環境の観点から厳しい意見をいただいた」と述べ、中立性に問題はないとした。
 

難波氏 県会議の進展に期待

 国土交通省専門家会議にオブザーバーの立場で参加した難波喬司県理事は、国交省が会議の結論を出す期限を示さなかったことについて「丁寧な議論を進める上で歓迎するべきこと」と評価した。委員とJR東海の議論がかみ合わず、膠着(こうちゃく)状態にある県有識者会議の議論が進展する糸口になることに期待を寄せた。
 環境省がオブザーバーの立場で会議に関わっていることに関しては「2014年(6月)の環境影響評価書で環境大臣が出した意見に対し、JR東海は十分な追加調査を行っていない」と指摘。同省に対し、会議へ積極的に関与することでJR東海を指導するよう求めた。

 

川勝知事「立ち上げ優先の印象」

 リニア中央新幹線工事に伴う南アルプスの生態系への影響などを協議する国土交通省専門家会議の初会合が開かれたことを受け、川勝平太知事は8日、コメントを発表し「まずは立ち上げを優先させたという印象を受けた」と評した。
 川勝知事は、ユネスコエコパークに認定された南アルプスの自然について「世界の南限とされる希少動植物が多数存在し、守るべき生態系がある」と重要性を強調した。その上で「(リニア工事の)影響が回避されるよう、国交省鉄道局は強いリーダーシップを発揮してほしい。環境省には積極的なサポートをお願いしたい」とした。

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