大人との出会い成長に 宇賀田栄次・静岡大教授【教育改革 核心を問う】

 学びと将来の働く姿をつなげて、生徒が充実した学校生活を送るにはどうすれば良いか。産学連携の人材育成を提唱し、キャリア形成支援に詳しい静岡大の学生支援センターキャリアサポート部門の宇賀田栄次教授(56)に聞いた。

産学連携の人材育成の重要性を説明する静岡大の宇賀田栄次教授=5月下旬、静岡市駿河区
産学連携の人材育成の重要性を説明する静岡大の宇賀田栄次教授=5月下旬、静岡市駿河区

 -大学生を見ていて感じることは。
 「公務員になりたいとか、物理の勉強をしたいとか、手段が目的化している。大学は専門分野での学びを活用して社会に貢献する場であり、医学部などを除き、学部と将来の具体的な職業は必ずしも一致しない。もっと大まかに、どんな社会課題に関心があるのかを考え、学部選びの軸に据えた方が良い。将来なりたい自分を小、中、高校の早いうちに決めるのが良しとされているが、あまりこだわると、視野が狭くなり、挫折した際にもろくなる。絞るのではなく、可能性を広げるように考えみてはどうか」
 -中学、高校のキャリア教育の現状をどう見ているのか。
 「信頼、尊敬できる大人との出会いは生徒の成長を促す。ただ、多くの学校が実施している社会人を招いた職業講話や職場体験の教育効果を十分に検討すべきだ。2021年度に県内の中学で、より良い社会人講話授業を実践しようと企画段階から携わった。学校と打ち合わせを行い、生徒からどのような考えや感想を引き出したいのかを具体的な言葉で決めた。生徒へのアンケートによると、登壇した3人の講師のうち、自身の中学時代の過ごし方や当時の思いを踏まえて現在の仕事の話をした講師が、将来の展望や自分の未来像について考える生徒の感想を最も多く引き出した。講師派遣する企業側は仕事の魅力を一方的に伝えるのではなく、目の前の生徒が何に悩み、何を求めているかを考え、共感を得られるよう工夫する必要がある」
 -より有効な授業の実施には何が必要か。
 「例えば中学や高校が地元の会社経営者に講演を頼んだとして、先生から『こうしてほしい』とは、なかなか要請しづらい。学校現場の多忙な事情もあり、入念な準備すら難しいのが現状ではないか。大学は学校と企業の仲介者になれる。学校側や企業側が公の場で議論し、互いの人材育成への期待を確認し合い、共有することも重要だ。島田市で21年に始動した高校、大学、商工団体、行政などによる人材育成プラットフォームはそのような問題意識に基づき、立場の異なる関係者が意見交換している」

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