生態系会議、8日初会合 首相肝いり、中立性配慮も 効力は不透明【大井川とリニア】

 国土交通省は6日、リニア中央新幹線工事に伴う南アルプスの生態系への影響を議論する専門家会議の初会合を8日に都内で開くと発表した。東京―名古屋間の2027年開業の遅れが確実となる中、事態打開へ岸田文雄首相自ら開催を表明した“肝いり”の会議。委員の選定や透明性の確保でも地元への配慮を色濃く打ち出した。ただ、先行して中間報告をまとめた大井川の水資源を巡る問題は未解決のまま。さらに多種多様な論点を抱える生態系の議論をどう決着させるのか。先行きに不透明感も漂う。
 今回の会議は、県有識者会議生物多様性専門部会の委員も加えた8人で構成する。中立性を担保するため、環境省の助言を受けて選定した。原則的にウェブで配信し、一般市民が視聴できるようになるのも大きな変化。県などの要望を受け、水資源の議論の際に問題視された運営方法を改善する格好だ。
 リニア計画を巡っては、足元で政府・与党が前のめりとなっている。自民党の特別委員会は5月26日、約1年ぶりに議論を再開。沿線都府県の知事らから聴いた意見を踏まえ、膠着(こうちゃく)する静岡工区の問題解決に積極的に関与していく姿勢を鮮明にした。
 同28日には首相が山梨県のリニア車両開発現場を視察し「デジタル田園都市構想を進める上で重要な基幹インフラだ」と強調。専門家会議を通じて早期開業への「環境整備に努めたい」と表明した。
 しかし、課題は山積する。県は国交省に対し、地下水位低下による生態系への影響を明確化した上で、JR東海に回避策を示すよう指導することを求めているが、地下水の減少予測には不確実性が伴う。専門家会議が具体的な対策の評価にまで踏み込めるかは見通せない。
 県専門部会では、トンネル湧水などの水質管理や残土置き場の安定性確保の必要性も指摘されている。事務局の国交省鉄道局担当者は初会合で「自由闊達(かったつ)に意見を出し合ってもらう」としていて、どのように論点を絞っていくかも焦点となる。

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