静岡市 コロナ感染防止へ児童標語コンテスト 保護者ら「心の負担」「同調圧力」懸念の声

 静岡市が6日まで市内の小学生を対象に募っている「新型コロナ感染防止標語コンテスト」(市静岡、清水両医師会共催)に疑問の声が上がっている。長引くコロナ禍で子どもたちに大きな負担が掛かり続ける中、「さらなる同調圧力を生むだけでは」と保護者や専門家が懸念している。

静岡市内の小学校を通して児童に配布されたコンテストの募集要項
静岡市内の小学校を通して児童に配布されたコンテストの募集要項

 企画した新型コロナウイルス感染症対策課によると、5月9日から「基本的な感染防止対策」と「新型コロナワクチンの接種促進」の2テーマで募集を始めた。事前に市教委に諮らず、市内の全小学校に応募票付きのチラシを送付した。入選者に図書カードを贈る。
 「親子でもう十分対策を考えさせられ、徹底もしている」。小学生の息子が感染した同市駿河区の会社員女性(38)が憤る。「交通標語なら分かるが、コロナはいくら気を付けてもかかってしまう」
 同区の団体職員女性(36)は、感染した年中の娘が「私コロナにかかっちゃったんでしょ」と申し訳なさそうに口にした時、子どもの心にまで負担が掛かっていると感じた。標語の募集で同調圧力が強まることを危ぶむ。
 同区の小児科医男性(37)は「受け止め方は人による。コロナを感染してはならない特別な病気と捉える人は違和感がないだろう」とみる。自身は診察してきた経験から「軽い風邪の一つ」と捉え、「風邪をひくのは悪いことではない。体調が悪い友達に大丈夫と声を掛け合える思いやりある社会をどうつくるか考えたい」と話す。
 同課の若月秀文課長によると、コンテストは感染者が急増した4月中旬に企画した。児童と保護者にあたる30~40代の感染が目立ったため、家族で改めて感染対策やワクチン接種を考える場を創出する目的だったという。
 加藤靖静岡大教職センター特任教授は「ようやく日常を取り戻そうとしている学校現場に水を差す企画。事前に市教委に通すべき事案だった」と指摘する。山本崇記静岡大人文社会科学部准教授は「標語募集は社会を一方向に導く運動。親子で考えてという意図は分かるが、より良い方法があったはず」とし、「コロナ対策やワクチン接種を進めるという一つの価値観が子どもにとっての『正解』になるのは避けたい。多様な考え方が許容される社会に導くことが大切」と話した。

市に意見100件 テーマから「促進」削除

 静岡市新型コロナウイルス感染症対策課が企画した標語コンテストは、ツイッターやユーチューブ番組で「ワクチン接種の努力義務のない児童に接種促進の標語を募っている」と話題になり、同課には5月末までに延べ100件(うち市民18件)の電話やメールが寄せられた。ほとんどが募集テーマの「接種促進」に異議を唱える内容だったとして同課は同30日、ウェブサイトで、募集要項から「促進」の文字を削除すると発表。批判はやんだという。6月3日時点で338点の応募がある。


 

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