許されるのか…迷いも 浜松女性市議「16週の出産欠席」初活用

 浜松市議会が昨春の会議規則改定で新設した「産前産後各8週、最大16週」の出産欠席制度を馬塚彩矢香市議(34)=市民サポート浜松、2期=が初めて活用し、今年2月に第1子を出産した。子育て世代の女性市議が増え、環境整備が進んできたが、出産と議員活動の両立には依然困難も多い。

第1子を出産し復帰した馬塚彩矢香市議=4月下旬、浜松市役所
第1子を出産し復帰した馬塚彩矢香市議=4月下旬、浜松市役所

 同市議会は市議46人のうち、女性が12人。議会事務局によると、任期中の出産は馬塚さんが3人目という。
 馬塚さんは昨夏からつわりが重かった上、医師からは切迫早産の恐れがあるとして、服薬と、できるだけ体を横たえるように指示を受けた。「有権者の負託に応えたい」と昨年末まで公務の出席に努めたが、1日がかりの視察や会議は「気が気でないほど苦しかった」と振り返る。
 期間を決めて欠席を届ける際も「許されるのか」と迷ったが、申請後は「安心して出産に備えられた。ありがたみを痛感した」と話す。
 産後8週を過ぎた4月12日に復帰した。体の痛みが続き、助産師に「せめて3カ月は赤ちゃんと一緒に過ごして」と勧められた。「8週は決して長くない」と感じる。ただ、出産を取り巻く制度の課題に触れた経験は大きな財産になった。「誰もが障壁なく出産できる社会に近づくよう、体験を生かしたい」と強調する。

 ■実例重ね徐々に改善 女性市議「周囲の理解 重要」
 産休を巡り、浜松市議会は2016年に北野谷富子市議(38)=市民クラブ、2期=が現職市議として初めて出産するのに当たり、会議規則に「出産欠席」の項目を追加した。それまでの規則は議員の出産を想定せず、公務の欠席を届ける場合は「事故」と同じ扱いだった。北野谷さんは「出産を正式な欠席理由として認められたのはうれしかった」と思い起こす。
 当時は欠席可能な日数の規定がなく、北野谷さんは出産わずか2週間後に本会議に出席した。議会事務局に市民から出産欠席への批判が寄せられたことも知った。「まだ休めない空気感があった」と話し、日数規定が活用されたことを前進と受け止める。
 20年には小泉翠市議(30)=自民党浜松、1期=が出産した。予定日2週間ほど前まで会議への出席を続けた一方、産後は支援者や同僚議員の勧めもあって2カ月近く本会議を欠席し、資料を取り寄せながら主に自宅で過ごした。
 復帰後は会派室に子どもを連れてきて働いたこともあった。小泉さんは「同僚の協力に恵まれた」と感謝し、「出産の負担は個人差が大きい。欠席日数の規定があれば安心して休めると思うが、周囲の理解が最も重要」と実感を込める。

 ■記者の目 多様な働き方へ改革不可欠
 静岡県と県内35市町の議会事務局に確認したところ、少なくとも過去10年で現職議員が出産した事例は浜松市以外では見られなかった。7年間で3人が出産した浜松市議会は、事例を重ねるごとに議会内外で理解が深まり、環境が改善されてきた点で先進的と言える。
 それでも、陣痛の重さや出産後の体調、育児に関わる周囲のサポートは三者三様で、抱える悩みも異なる。同市職員に産後最大で3年間の育児休業や部分休業などの制度があるのに比べ、活用できる制度は少ない。限られた任期中に結果を出す義務感にも駆られ、それぞれ重い負担の中で活動を続けている。
 一方、3人とも議員の立場で出産を経験したことで、少子化対策への問題意識を高めたという。社会に還元するためにも、議会の古い慣習や価値観にとらわれず、育児の大変さを実感しながら活動してほしい。情報通信機器の活用などで、自宅から参加できる公務もあるだろう。働き方の選択肢を広げる議会改革が不可欠だ。
 

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