住民参加型の家造り 建築会社営む松村さん(森町)が挑戦

 家は地域のみんなで建てる―。最近はあまり見られない住民参加型の家造りの普及に、森町で建築会社を営む松村寛生(ひろお)さん(46)が挑戦している。新築や改築の壁塗りに、プロやその家で生活する人だけでなく地元住民らも参加するワークショップを展開。5年前に始め、じわりと広がっている。松村さんは「持続可能な開発目標(SDGs)が注目される今こそ、地域の人たちに暮らし方を見つめ直してもらいたい」と語る。

家の壁塗り体験を見守る松村寛生さん(奥)。「地球に優しい暮らし」が信条だ=5月上旬、浜松市浜北区
家の壁塗り体験を見守る松村寛生さん(奥)。「地球に優しい暮らし」が信条だ=5月上旬、浜松市浜北区


 浜松市浜北区の中安利文さん(67)方に5月上旬、家族連れやDIY好きの主婦らが次々と訪れた。改築家屋の土壁を塗るためだ。袋井市の会社員鈴木彦太郎さん(38)は長女の美紀子ちゃん(2)と一緒に参加。「娘も楽しんだことだし、自分が家を建てる時にもやってみたい」と意欲的だった。中安さんは「建築物が好き。古来の家造りの文化を地域で共有できるのもいい」と自宅改築をワークショップの場として提供した理由を話す。
 松村さんは「自然の素材を生かした家は100年持つ」と信念を語る。三重県出身で、福島県の建設会社に勤務していた頃、古民家再生に携わった。京都府ではログハウスを建てる仕事に関わった。家造りがかつては村人の労働力を集めて行われ、壁を塗ったり屋根のかやをふいたりした歴史も学んだ。
 2006年、森町に「木ごころ工房」を設立。17年の自宅建築がワークショップ初回になった。松村さんの妻菜々子さん(43)は東京都出身で「夫から地球に優しい暮らしをしたいと言われ、驚いた」と振り返る。石場建ての免震構造で調湿性のいい自宅を快適に思い、今は松村さんの信念に共感。ワークショップでは参加者への説明役などを買って出る。
 松村さんが開いたワークショップの実績はまだ数件だが、参加者の反応には手応えを感じている。「最先端の技術に頼るばかりでなく、昔の人の知恵に学ぶという選択肢を家造りでも示したい」と意気込む。

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