山林維持へMTB疾走 ヤマハ発社員ら 森町に専用施設手作り

 森町三倉の山林に今春、マウンテンバイク(MTB)の専用施設「ミリオンペタルバイクパーク」がオープンした。ヤマハ発動機社員らでつくる同好会「森マウンテンバイククラブ」が1年以上かけて、手作業で一から作り上げた。適度に人の手を入れることで森林の機能を維持しつつ、中山間地のにぎわいづくりにつなげる。

森林の有効活用と中山間地のにぎわいづくりを目指す「ミリオンペタルバイクパーク」=5月中旬、森町三倉
森林の有効活用と中山間地のにぎわいづくりを目指す「ミリオンペタルバイクパーク」=5月中旬、森町三倉
スコップなどでコースを手作りする森マウンテンバイククラブのメンバーら=1月、森町三倉(柏崎佑介さん提供)
スコップなどでコースを手作りする森マウンテンバイククラブのメンバーら=1月、森町三倉(柏崎佑介さん提供)
森林の有効活用と中山間地のにぎわいづくりを目指す「ミリオンペタルバイクパーク」=5月中旬、森町三倉
スコップなどでコースを手作りする森マウンテンバイククラブのメンバーら=1月、森町三倉(柏崎佑介さん提供)

 「ヤマザクラやコナラなどが並び、雰囲気が素晴らしい」―。2020年秋、フォレストツーリズムのイベントで現地を訪れた同クラブ部長の小倉幸太郎さん(47)は多様な植生に魅了され、パーク開設を思い描いた。自分たちの手でMTBを楽しめる環境をつくるのが長年の夢だった。
 山林所有者で町森林組合の甚沢万之助組合長(75)も有効活用を模索していた。「MTBパークは時代に合った取り組み。人を呼び込むきっかけになれば」。2人の思いがかみ合い、クラブは21年1月からコース作りを開始。資金が限られる中、メンバー約50人がツルハシやスコップで少しずつ整備を進めた。
 元々の自然環境を生かし、立ち木の間を縫うようにコースを手作りして今年4月に開業にこぎ着けた。甚沢組合長の四女の夫で住設メーカー勤務の攻さん(43)もクラブに入会し、「山林の価値を高め、子どもたちに引き継ぎたい」と運営会社の代表に就任した。
 パークには、全長20メートルの子ども向けから、400メートルの中・上級者向けまで、さまざまな難易度の5コースを設けた。新たなコースも造成中だ。
 収益から借地料を支払うことで、森林所有者の新たな収入源確保のモデル確立を目指す。「森林活用の成功事例を全国に発信し、森町をMTBの聖地にしたい」と小倉さん。近隣施設や町と連携した町内周遊の仕組みづくりや、地元小中学生、住民向け体験イベント開催も構想している。
 パークは土日曜、祝日に営業し、利用料は大人2千円、中学生以下は無料。

 ■本業の経験生かす
 森町に開業したMTBパークの運営会社「ミリオンペタル合同会社」は、代表の甚沢攻さん(43)や森マウンテンバイククラブ部長の小倉幸太郎さん(47)ら4人が今年1月に設立し、副業として役員に就いた。
 ヤマハ発動機のエンジニアの小倉さんは、人事担当者との面談を重ね、「地域貢献になるなら」と副業が認められたという。終業後や休日を使って運営会議やパークの維持管理に取り組んでいる。合同会社は無給だが、「コース作りはMTBの魅力の一つ」と楽しむ。
 ヤマハ発では、低速で公道を走る電動車による移動サービスの社会実装を担当する。行政と連携し、中山間地や高齢者の交通課題解決につなげる仕事。小倉さんは「ヤマハ発と合同会社での仕事は共通する面が多い。経験を生かしたい」と意気込んでいる。

いい茶0
あなたの静岡新聞 アプリ
地域再生大賞