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海鳴りと天気、関係は? 遠州七不思議「波小僧」実態に迫る

 「波(浪)小僧は海鳴りで、天候の悪化を知らせる」-。遠州七不思議の一つとされる「波小僧」をテーマにした地域研究を、日本サウンドスケープ協会(東京都)浜松研究チームが進めている。浜松市西区篠原地区で郷土史を研究する「浜風会」と連携し、遠州灘から聞こえる波音と気象の因果関係を調べ、2023年度内をめどに成果をまとめる予定だ。

遠州灘の波音を録音する日本サウンドスケープ協会と浜風会のメンバー=5月下旬、浜松市西区
遠州灘の波音を録音する日本サウンドスケープ協会と浜風会のメンバー=5月下旬、浜松市西区
浜松市西区舞阪町にある「浪小僧」の石像
浜松市西区舞阪町にある「浪小僧」の石像
遠州灘の波音を録音する日本サウンドスケープ協会と浜風会のメンバー=5月下旬、浜松市西区
浜松市西区舞阪町にある「浪小僧」の石像

 同協会は音を、社会や文化の関わりで考える活動を展開している。放送大千葉学習センターの兼古勝史客員准教授(60)らメンバー3人は遠州灘沿岸地域の伝承を基に、20年から研究を始めた。メンバーの1人、山梨県立大の箕浦一哉教授(52)は「広い海岸線を持ち、波の音がよく聞こえ、風もよく吹く遠州の感性的な財産を残すことに貢献できれば」と語る。かつてヤマハ製の「ミュージックサイレン」を研究した実績もあり「浜松と音」に高い関心を寄せていた。
 浜風会の協力で、同年秋から1年間は篠原地区10カ所以上で波音のレベルや海の様子などを観測し、「ザー」「ザザー」など聞き取った波音を文字化。21年7月から11月には、3カ所で波音を録音した。同会の山下勝彦会長(80)は「最初は波と自動車の音の区別が難しかったが、慣れると、さまざまな波音が聞き取れるようになった」と振り返る。
 5月下旬に行った浜名湖北側の引佐地区(同市北区)での聞き取り調査では、遠州灘から約25キロ離れた中山間地でもかつて波音が聞こえたなどの証言を得た。今夏には、インターネットを使って市民から証言を募ることも検討している。
 協会メンバーで関西大の大門信也准教授(46)は「もう少し広い範囲で調査を進め、研究結果を発表できる機会をつくりたい」と意気込む。

 <メモ>波(浪)小僧は太鼓をたたいて天気を知らせる妖怪とされる。御前崎市から愛知県の伊良湖岬までの遠州灘一帯に残る言い伝えで、かつては海鳴りの聞こえる方向から天候を予測。西から聞こえれば天気は良くなり、極端に東なら荒れるとされる。1996年に環境庁(現環境省)が「残したい日本の音風景100選」に認定した。

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