男性不妊症 診断、新技術開発へ 浜松医科大などオール静岡体制

 浜松医科大(浜松市東区)生殖周産期医学講座の研究者や静岡市の不妊治療クリニックなどでつくる研究グループが2022年度、男性不妊症の正確な診断に役立つ新技術の開発に乗り出す。日本医療研究開発機構(AMED)の研究開発プログラムとして採択を受けた。

男性不妊症の診断方法開発のイメージ
男性不妊症の診断方法開発のイメージ

 基盤となるのは、浜医大の宗修平特任助教(40)と同大発のベンチャー企業「NanoSuit(ナノスーツ)」の共同研究チームが21年度に発表した「生きた状態の精子を電子顕微鏡で高精細に観察できる手法」。精子の細胞表面の情報を損なわず、光学顕微鏡と比べて格段に鮮明な画像で観察・解析を可能にした点が評価を受け、日本アンドロロジー(男性学、雄性学)学会賞を受賞した。
 新技術の開発に当たってはこの手法を活用し、先端部分の形状に異常が見られた精子と不妊治療の成績の関連データを蓄積。人工知能(AI)の機械学習を使い、精子の形の特徴から男性不妊症を自動的に判別できる手法の確立を目指す。
 宗特任助教は「従来の精子の濃度や運動率を調べる手法に加え、精子の形態異常も確認できれば、治療の必要性の有無が判断しやすくなる」と話す。
 研究グループには宗特任助教のほか、同大泌尿器科、静岡大農学部、俵IVFクリニック(静岡市駿河区)なども参画。県内の大学や医療機関が連携して取り組む体制を構築した。
 国立社会保障・人口問題研究所の15年の調査によると、夫婦の約5・5組に1組が不妊の検査や治療を受けた経験があるとされ、過去の調査と比較して増加傾向にある。世界保健機関(WHO)の調査では、不妊の約半数は男性に原因があるとされるが、女性の不妊症に比べ研究は遅れている。
 宗特任助教は「同様の手法は、精子の成熟度の予測にも応用できる。オール静岡で男性不妊治療に役立つ手法を確立したい」と意気込みを語る。

 <メモ>不妊治療を巡っては、4月から公的保険の適用範囲が拡大し、人工授精や体外受精、採卵、胚の培養なども対象となった。これまでは原因検査などに対象が限られ、保険適用外の自由診療に当たる治療では、高額な費用が必要な場合もあった。治療開始時に女性の年齢が43歳未満が適用の条件。40歳未満は1子ごとに通算6回まで、40歳以上43歳未満は通算3回まで。

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