金融 コロナ後へ支援加速【再浮上への挑戦 検証3月期決算㊦】

 「足元の情勢は非常に不透明。1年後の業績は少し慎重に予想している」。静岡銀行の柴田久頭取は2022年3月期決算会見で、先行きへの警戒感を口にした。

静岡県内地銀4行のコア業務純益の推移
静岡県内地銀4行のコア業務純益の推移

 地域経済は今、原油・原材料価格の高騰や供給網の混乱に見舞われ、影響が幅広い業種に及んでいる。長引く新型コロナウイルス禍に加え、ロシアのウクライナ侵攻や急激な円安が追い打ちをかけ、混迷度合いは一層深まっている。
 厳しい業況の中で県内地銀4行の決算は、スルガを除いて本業が堅調だった。コア業務純益は静岡が560億円、清水41億円、静岡中央27億円に伸長した。だが内情は、激増したコロナ関連融資で一時的に利息収入が増えたのが主因だ。今後に返済が本格化し、債務超過に陥る取引先が広がれば、各行の業績を暗転させかねない。「関連融資で倒産件数がバブル期並みに抑え込まれている」。ある地銀幹部は不安を隠さない。
 与信費用の急増を避けるためにも、4行は取引先の経営支援に向けた取り組みを加速させている。
 静岡は4月、名古屋銀と包括業務提携を結んだ。静岡、愛知両県の自動車関連産業で進める次世代車開発に伴う支援を広域連携で進める狙いがある。10月に控える持ち株会社化では、コンサルティングや中小企業支援などの業務を担う子会社を銀行と対等な関係に格上げし、事業領域やサービスを拡充させて銀行依存型ビジネスモデルからの脱却を目指す。
 清水が力を注ぐのはグリーンローンやポジティブ・インパクト・ファイナンスといった環境融資。脱炭素化などに意欲的な取引先の支援に乗り出している。静岡中央は昨年11月、事業承継やビジネスマッチングを推進するため、神奈川銀と包括業務提携を締結した。スルガもコロナ収束後の外国人労働者の増加を見越し、外国人向けの金融サービスを進めている。
 各行は取引先が抱える課題の解決に積極関与することで、融資以外の収益獲得や経営基盤の強化につなげる。疲弊した経済再生へ地域金融機関の真価が問われる。
 (経済部・高松勝、駒木千尋、薮崎拓也が担当しました)

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