難病患う漫画家 夢の初出版「苦しむ人のよりどころに」 磐田

 指定難病「好酸球性胃腸炎」を患う漫画家寺田浩晃さん(27)=磐田市福田=が、念願だった初のコミック出版を実現した。13日、書き下ろし作品を含む3編を収めた短編集が発売された。「本を出したいという一心で諦めず描き続けた。夢の第一歩を踏み出せた」と感慨もひとしおだ。

自身初の書籍を出版する漫画家の寺田浩晃さん。長時間座ることができず、立ったまま執筆作業に励んでいる=磐田市
自身初の書籍を出版する漫画家の寺田浩晃さん。長時間座ることができず、立ったまま執筆作業に励んでいる=磐田市
書籍に収録される作品の原稿の一部
書籍に収録される作品の原稿の一部
自身初の書籍を出版する漫画家の寺田浩晃さん。長時間座ることができず、立ったまま執筆作業に励んでいる=磐田市
書籍に収録される作品の原稿の一部

 2018年、子どもの頃からの夢だった漫画家として活動を始めた寺田さん。雑誌連載が目前だった19年、多忙で無理がたたり、治療法が確立されていない病を発症。慢性的な嘔吐(おうと)や腹痛の症状に加え、前立腺炎などを併発し長時間座れなくなった。
 「生きた証しを残したい」。闘病を続けながらも本出版の夢をかなえようと、21年1月から動画投稿サイト「ユーチューブ」で漫画の発信を始めた。その思いを表現した動画「はじめまして」は130万回以上再生された。これまでに7本の漫画を投稿し、テレビドラマ化された作品もある。
 コミックにはタイトルにもなっている「黒猫は泣かない。」などを収録した。社会人の主人公が、小学生の頃いじめられていた同級生の死に対面し、自分を省みる物語。寺田さんは「いじめを受けていた子どもの頃、本に救われた。今作が苦しむ人のよりどころになってくれたらうれしい」と思いを込めた。
 発行を提案した、とおとうみ出版(浜松市南区)企画編集担当者の宮本弓子さん(40)は「地元企業として病気を抱えながら活動する寺田さんの一助になりたかった。若者の葛藤や生きづらさを表現した小説のような重厚な内容」と話した。
 A5判144ページ。1100円(税込み)。県内の谷島屋やネットで販売する。問い合わせはとおとうみ出版<電053(415)1013>へ。
 

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