沼津・原に植物工場 26日完成、生産開始 農業で地区活性化期待【解説・主張しずおか】

 沼津市西部の原地区に26日、葉物野菜を量産する「ブロックファーム植物工場」が完成、生産を開始する。植物工場としては世界最大級の規模。生産や加工、冷凍の一体型施設で、事業者は販売面も加えた多角的な計画を描いているため、雇用面や地元経済への幅広い効果が見込まれる。県、市、地元は工場を柱に一帯を農業の一大先進地にと構想し、農業を核にした地域活性化を図る考え。衰退が進む地区全体に波及させる取り組みが欠かせない。

沼津市の原地区に今月26日完成する予定の植物工場「ブロックファーム」予想図
沼津市の原地区に今月26日完成する予定の植物工場「ブロックファーム」予想図

 都内の三菱電機グループの菱電商事と農業ベンチャーのファームシップが合弁会社「ブロックファーム」を設立した。世界で初めて水耕栽培によるホウレンソウの量産を手掛けるほか、環境や省エネに配慮したシステムを導入するなど次世代型の施設を整備する。
 原地区は県が先端科学技術を活用した農業イノベーション創出エリアに認定している。県は一帯を「次世代農業団地」ととらえ、高付加価値のある農業ビジネスを展開する実証フィールドに想定している。至近に位置する県農業技術産学官連携研究開発センター「AOI―PARC(アオイパーク)」をはじめ、新品種の試験ほ場や栽培技術を指導する新規就農者向けの役割も担う植物工場の連携で新技術開発や担い手育成も見込む。
 施設は国道1号沿い。利便性の良さと、企業や研究機関とのつながりを持つアオイパークの存在が進出の決め手となった。地元に拠点を置く同市商工会が活性化の起爆剤にと誘致した。植物工場の新規雇用の大半は地元から採用する。地元ブランド「あしたか牛」が地産地消を推し進めて軌道に乗せたことを好例に、将来的には地元産農産物のブランド化にも挑んでほしい。
 原地区をはじめ同市西部はかつて、農業が盛んだった。地区を構成する原と浮島のほか、隣接する片浜などは全体に広がる平たん地を活用し、水稲や茶の生産で地元を潤してきた。しかし、1968(昭和43)年に沼津市と合併して以降、宅地化と工業用地化が加速して農地は減少し、第1次産業は衰退した。
 新工場の稼働とともに、地域のポテンシャルを生かした取り組みが始まる。一大産地化やブランド化の先には他地域との競争も待っている。官民一体となった挑戦が求められている。

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