問題浮上の「砂防法」に踏み込まず 熱海土石流・検証委最終報告

 熱海市伊豆山の大規模土石流を巡り、半年間にわたって静岡県と熱海市の行政対応を検証してきた県の委員会(委員長・青島伸雄弁護士)。13日にまとめた最終報告は森林法や県土採取等規制条例といった一部の関係法令に検証対象を重点化し、県が砂防規制の拡大を約20年放置していた問題が浮上した砂防法に深く踏み込まなかった。検証に協力した市は、規制区域の地権者調整など幅広い課題が検証されていないとの認識を示し、再発防止につながるのか疑問視した。

県行政対応検証委員会の最終報告の課題
県行政対応検証委員会の最終報告の課題

 「短い時間の中で資料を検討した。他の法令までは手が回らなかった」。青島委員長は最終会合後の記者会見で、検証が不十分ではないかという指摘に対し、膨大な資料を精査する必要があり、時間が足りなかったのが理由だと繰り返した。
 検証委は、検証対象を崩落した盛り土の造成に関することに限定し、盛り土周辺の宅地開発や太陽光発電施設などを含まなかった。砂防法の問題に関しては、県が1998年に国に提出し、検証の鍵となる砂防規制区域「砂防指定地」の申請文書を検証委の委員が確認したのが最終会合の数日前。最終報告には規制対象になる「土石流危険渓流」という記載もなかった。
 検証委が関係職員へのヒアリングを直接実施しなかったり、砂防法関連の聴取内容を公表していなかったりする理由の説明を求める質問も出たが、青島委員長は「意識していなかった」と述べるにとどめた。
 熱海市の金井慎一郎副市長は、県土採取等規制条例に関し「国、県レベルでの改正対応の必要性があったのではないか」とし、砂防法についても「地権者調整とエリア安全性の比較考量の問題がある」と課題を提起。「(県検証委は)検証のバランスを欠いている。極めて重い論点を深掘りしてこそ全国での再発防止に資する」と話し、市としても独自の検証を進める考えを示した。

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