現旧土地所有者「分からない」「記憶にない」 議会関係者ため息、実態解明は遠く【熱海百条委・証人尋問】

 「分からない」「記憶にない」―。熱海市伊豆山の大規模土石流を巡り、虚偽の証言をすれば罰せられる証人尋問が12日に行われた市議会調査特別委員会(百条委員会)。崩落して被害を拡大したとされる盛り土が造成された現場の現旧土地所有者が、初めて公の場で証言に立った。民事訴訟を控えて慎重な姿勢を強める証人から実態解明につながるような説明は引き出せず、議会関係者からはため息が漏れた。

 「10年前のことなので記憶違いがあることに了解を」。旧所有者の神奈川県小田原市の不動産管理会社代表(72)は発言の冒頭、被災者遺族への追悼の言葉より先に記憶違いの断りが口をついて出た。県土採取等規制条例に違反した盛り土に話が及ぶと、社員が行政に対応したとして「覚えがない」「事務方が対応した」と自身の関与を否定した。
 造成時の協議の様子を録音したとされる音声データを元に熱海市議から「あなたの声か」と追及された際は、「私の声とも言える」と曖昧な答えに終始した。
 約2時間に及んだ尋問では、市による行政指導が現所有者に繰り返されたことを引き合いに「実質的な指導対象は現所有者だ」と責任を認めなかった。
 現所有者の実業家の男性(85)は2011年に土地を購入した際は仲介業者に任せていたとし、売り主による亀裂修復を記した売買時の文書について「実は十分見ていない。不動産屋任せで、チェックしていない場合が多い」と述べた。盛り土の県条例違反は知らず、そもそも現地へ行ったことがなかったとも主張した。
 きっぱりと説明する場面もあり、盛り土崩落地周辺に「土砂を搬入したことはない」と強調。盛り土造成の現場責任者が防災工事を中断した理由に、現所有者の代金不払いを挙げていることには「全然事実ではない」と反論した。最後に、亡くなった人へお悔やみの言葉を口にしたが「法律的にも現実的にも難しいところがある」と付け加えた。
 関係者の証言の食い違いは埋まらず、事実関係が不明な点は残されたまま。百条委の稲村千尋委員長は「真実を求めることができず残念だ。被災者には申し訳ない」と肩を落とした。
 

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