逢初川上流の「砂防規制」 申請書確認せず「妥当」 静岡県検証委【熱海土石流】

 熱海市の大規模土石流で県と市の行政対応が適切だったのかを検討する行政対応検証委員会(委員長・青島伸雄弁護士)が、逢初(あいぞめ)川上流域で盛り土などの行為を規制する区域「砂防指定地」の指定範囲を検証した際、県から国に提出された指定申請文書を確認しないまま、指定範囲を「妥当」と結論付けていたことが11日までの取材で分かった。判断の参考にしたとされる関係職員へのヒアリング結果も該当部分を公表しておらず、検証の信頼性が問われそうだ。

県の砂防指定地申請文書と行政対応検証委員会の報告書の主な内容
県の砂防指定地申請文書と行政対応検証委員会の報告書の主な内容


 県は1998年、逢初川上流への砂防ダム設置に伴い、砂防指定地の範囲をダム付近に限定して申請した。上流域全体に指定を拡大する「面指定」を目指す方針も記載していたものの、その後約20年間放置し、指定範囲外に造成された盛り土は砂防法の規制対象にならなかった。
 検証委は3月にまとめた報告書(砂防法関連は最終報告)で、砂防指定地の範囲や区域変更の在り方を論点として取り上げたと説明していた。ただ、検証委事務局によると、指定申請文書の原本は確認せず、関係職員を対象にした県の内部検証チームが聴き取った情報を元に判断していたという。
 報告書は限定的な指定について、指定申請文書の「地権者の同意が得られていないため」「渓流の荒廃は進んでいるものの流域上部は管理された植林地帯である」の記載を根拠に「砂防法の解釈としては妥当であった」と結論付けていた。一方、今後の方針として記された「流域全域の面指定を進めていきたい」という内容には触れなかった。
 検証委が報告書と同時に公表した関係職員への聴取概要には、砂防指定地に関する聴取内容を掲載していない。検証委事務局は「公表の判断は聴取を担当した県法務課だ」としている。

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