「電動車椅子」販売拡大 免許返納の高齢者サポート 車に代わる移動手段提案

 高齢者の運転免許証返納が増加傾向にある中、新たな移動手段の確保を支援しようと、静岡県内の自動車販売店で操作性の高い次世代型電動車椅子の取り扱いが広がりだした。店側から車以外の選択肢を積極的に提示することで、これまで車に乗ってきた高齢顧客の生活を支えつつ、商材の多様化で販売店としての競争力強化も図る。

自動車販売店が取り扱う「ウィル」。運転免許証返納後の移動手段確保を支援する=4月中旬、静岡市清水区
自動車販売店が取り扱う「ウィル」。運転免許証返納後の移動手段確保を支援する=4月中旬、静岡市清水区


 導入が広がるのは、都内メーカーのWHILL(ウィル)が手掛ける電動車椅子「ウィル」。静岡スバル自動車(静岡市清水区)は3月下旬、県内13店で取り扱いを始めた。最大5センチの段差を乗り越える高い走破力と、手でレバーを操作するだけで動く扱いやすさが特長。黒を基調にした近未来的な外観も併せ、アクティブシニアと呼ばれる高齢者層への訴求を目指す。
 早速、顧客からは「操作が楽だし、自宅で充電できて便利」などの声が寄せられ、4月中旬までに5台を販売した。宮崎慎矢新規事業開発部長は「車に乗らなくなっても、外出のサポートを続けたい」と語る。
 ホンダカーズ駿河(菊川市)も高齢化対応の一環で4月から扱いを始めた。計5店舗を立地する菊川、掛川、牧之原の3市は静岡、浜松両市に比べ住民の車への依存度が高いという。このため同社は、購入を検討中の顧客が自宅周辺などの生活動線上で試乗できるようにし、新たな移動手段への移行を支援している。
 大村卓己事業部長は「人口減少と高齢化が進む中、電動車椅子を品ぞろえに加えることで少しでも収益を確保し、企業の持続性を高めたい」と語る。
 ハンドル操作型電動車椅子「セニアカー」の販売が好調なスズキは、電動車椅子と歩行補助具の両方の機能を持つ電動アシストカート「クーポ」の試験機を製作し、実証実験を行っている。国内ではベンチャー企業を中心に、スマートフォン連動型などの次世代型電動車椅子の市場投入が進む。

<メモ>警察庁によると、運転免許証の自主返納者数は2019年に過去最多の約60万人だった。業界団体の電動車いす安全普及協会の調べでは、電動車椅子の国内出荷台数は、2017年度から4年連続で、2万台前後で推移している。ウィルは全国の自動車販売店70社・700店舗以上で扱う。WHILLの広報担当者は「バスの路線廃止などが進む地方での導入が目立つ」と説明する。

 

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