中世ビール原料「ヤチヤナギ」 静大に植樹、株増やし醸造材料に

 静岡大の学部横断組織「発酵とサステナブルな地域社会研究所」(所長・大原志麻人文社会科学部教授)は6日、産学官の垣根を越えて再現を試みる中世欧州のビールに必須の原料植物「ヤチヤナギ」を静岡市駿河区の同大学内に植樹した。生育の経過を観察しながら県内で株を増やし、3年後にビール醸造の材料として用いる計画。

ヤチヤナギを植樹する田島慶吾人文社会科学部長(手前右)と佐藤洋一郎ふじのくに地球環境史ミュージアム館長(同左)=静岡市駿河区の静岡大
ヤチヤナギを植樹する田島慶吾人文社会科学部長(手前右)と佐藤洋一郎ふじのくに地球環境史ミュージアム館長(同左)=静岡市駿河区の静岡大

 式典では田島慶吾人文社会科学部長とプロジェクトに加わるふじのくに地球環境史ミュージアム(同区)の佐藤洋一郎館長が、ヤチヤナギの研究に取り組む北海道立総合研究機構森林研究本部林業試験場から提供された幼木を丁寧に植えた。
 ヤチヤナギは中世の欧州の庶民が飲んだ「グルートビール」の主原料。ヤマモモ科の絶滅危惧種で本県に自生地はないとされるが、同試験場の脇田陽一森林環境部長は「植物間競争には弱いが暑さには耐えられる。静岡でも育つはず」と作物化に太鼓判を押した。
 植樹式に参加した静岡大の本橋令子副学長は「ユニークな性質の植物。生育とビールへの活用が成功すれば、静岡発のイノベーションとして注目を集めうる」と期待を込めた。
 同研究所は昨年12月、発酵食品・飲料を地域社会の発展につなげることを目的に開設された。人文社会科学部、理学部などの教員ら約30人が名を連ねる。4月には連携先の醸造所「フジヤマハンターズビール」(富士宮市)が、同試験場から取り寄せたヤチヤナギを使ったビールを完成させている。

 

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