新入社員との関係づくり どうしたらよいのやら【NEXT特捜隊】

 
 「年々、新入社員とうまく打ち解けられなくなっています」

 今年も静岡県内各社にフレッシュな新入社員が入社し、1カ月。静岡市の男性会社員(50代)から、読者の疑問に応える「NEXT特捜隊」に投稿が寄せられました。「新入社員の雰囲気が変化しているのか、自分が老化しているからか大きな壁があります」と悩む男性。「なるべく、フラットに良い関係を築きたい」と望んでいます。
 新入社員との関係づくりで心掛けるポイントとは―。中小企業の新卒採用コンサルタントとして「新卒を迎えるための社内研修」を手掛け、就活カフェ「ナナショク」も運営するナナクレマ(同市葵区)代表の武友久美さん(34)=写真=と、県内企業で働く新社会人に話を聞きました。
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 投稿者の男性に具体的な困り事を聞いたところ、▽新入社員と会話が続かず、本心が見えない▽仕事に関心があっても、会社には関心がないようで、仲間意識が薄い▽落ち着いて成熟しているように見えるが、上司や先輩をあまり受け入れない感じがする―とのことでした。それを踏まえ、武友さんに助言を求めました。

 

>>どんな関係築きたいか



 ―新入社員との間に「壁」を感じてしまうという人は多いように思います。
 私たちは毎年、一つずつ年を取っていますが、新入社員はいつも22歳など決まった年齢です。そうなると、年齢のギャップは毎年大きくなっていきます。年齢と経験を重ねている中で、見えている世界が新入社員とだんだん離れていくという事実は仕方がないことです。

 ―とはいえ、「壁」は解消したいですよね。
 まず、「壁」とは何なのかを明確にする必要があります。「壁」とは「一緒に仕事をしづらい、仕事を教えづらい」ということなのか、それとも単に「仲良くなれない」という意味なのか。ここでは、仮に前者とします。
 今の50代の方は、上下関係が厳しい中で仕事をし、先輩が指導しやすいように後輩側が気を使うのが当たり前だった世代です。ただ、今は、個で何かをするという場面が多い時代になり、そういう若者は減っています。なので、先輩社員から歩み寄り、新入社員のことを知ろうとする姿勢が必要かもしれません。先輩社員は、新入社員がなぜこの会社を選んだのか、会社でどんな存在になりたいと思っているか、などを聞いてみてください。新入社員が目指すべき姿に向けて、仕事を教えたり、一緒に取り組んだりすればコミュニケーションも円滑になっていくと思います。

 ―投稿者は「良い関係」を築きたいと話しています。
 ここでも「良い関係」の定義を考えた方がいいですね。
 ある人は良い関係を「仕事仲間と飲みに行ったり、休日も遊んだりするような関係」とイメージするかもしれません。でも、新入社員にとっては、例えば「メール1通の送り方でも、気軽に『これでいいですか』と相談できる関係」かもしれません。先輩社員が「良い関係」を築きたいのであれば、それはどういったことなのか定義した上で、かみ砕いて新入社員に伝え、共有してほしいです。

 ―「仲良く」というか、雑談などで打ち解けたい場合はどうすればいいでしょうか。
 以前は「昨日のあれ、見ましたか」といったテレビ番組を中心とした共通の話題があったと思いますが、今はそれが見つけにくいです。50代も20代もみんながスマートフォンを見ている時代ですが、画面の中の世界はパーソナライズ化され、それぞれの好きなものだけが映し出されています。20代に人気がある何か一つを知っておけば会話が続くということは少なくなりました。相手が何に興味を持っているかは聞いてみないと分からない。雑談でも、相手のことを知ろうとする問い掛けをしてみてください。


>>性格でなく、行動褒めて



 ―ここ最近の新入社員の特徴はありますか。
 一概には言えませんが「自分が何に一生懸命になれる人間なのか分からない」という人が増えたように感じます。新型コロナウイルスの影響により、大学でサークル活動や部活動がしにくくなりました。いろんな性格のメンバーがいて、ぶつかり合いながらもそれを乗り越え、何かを成し遂げるという経験が得にくい状況です。留学を目標に英語の勉強をしていたが、それがかなわなかったとか、バイトリーダーに情熱を燃やしていたが、店が閉店したとか。頑張っていたことが急にできなくなってしまうという「喪失感」を持ち、新社会人になった人も多いです。ただ、今の若者が冷めているということはなく、もっと自分を成長させていきたいという欲求は心の底に持っていると思います。

 ―「新卒を迎えるための研修」で伝えているポイントは何でしょうか。
 一つは褒め方です。ポイントは、新入社員を分析して性格を褒めるのではなく、観察して行動を褒めるということです。例えば、いつも朝一番に出社して、上司のデスクに新聞や郵便物をきれいに置いてくれる新入社員がいるとします。
 ある時、上司が唐突に「~さんは気が利くね」と伝えたとしても、本人は何を褒められているのか分かりません。「朝、新聞や郵便物を置いてくれているのは、~さんだよね。気が利くね。助かっているよ」と、事実に基づいて行動を承認すると、本人も納得し、次へのモチベーションにもつながります。仕事に対するフィードバックもそのような方法で行うよう助言しています。
 また、今の50代など厳しい環境の中で仕事をしてきた人は、できていないことを注意されるのに慣れています。当然、できていないことを注意するのは必要ですし、日々あることだと思います。ですが、それだけでは新入社員も自信をなくしてしまいます。まずは、できていることを承認しましょう。その上で、できていないことについて、改善策を伝えたり、本人に考えてもらったりすると効果的です。


>>今年の新入社員にも聞きました



 ◇運送業、男性(22)=浜松市南区=
 2日ほどの研修後、倉庫の仕分け作業の仕事に取り組んでいます。自分にとっての「良い先輩」は一方的に話すのではなく、こちらの話をよく聞いた上で、仕事のアドバイスをくれる人です。業務以外の場面でも「最近どう?」「どうしてこの会社に入ったの?」など話しかけてくれる先輩は、自分も話しやすいです。自分が信頼され、仕事を任せてもらえていると実感できる場面があると、「良い関係」を築けているのかなと思います。
 ◇自動車関連、女性(22)=焼津市=
 保険提案のロールプレーイングで、先輩同士が自分の世代にはよく分からない話題で盛り上がっていた時、少し冷めた気持ちになりました。昼食中、先輩から「静かだね」と言われましたが、私たちはコロナの流行で個々に食べるのが普通になっています。早く先輩、上司の顔を覚え、どの人だったら困った時に気軽に質問できるか探っていきたいです。「新入社員は分からない、知らないのが当たり前」と考え、教えてもらえるとありがたいです。
 ◇IT関連、男性(23)=静岡市清水区=
 新入社員の不安は「何をしたらいいか分からない」「このやり方で合っているのか」といったことだと思います。職場に長くいれば「常識」とされる細かな仕事こそ、新入社員は明確な指示がなければ分かりません。こちらからの質問や確認を「レベルが低い」と思わず、安心感を持てる対応を望みます。指導や注意をした後、様子を気に掛けてくれるような先輩、上司が理想です。自分も将来はそうなりたいです。

 

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