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老舗底力、再起のしょうゆ 牧之原「ハチマル」突風被害から1年

 牧之原市内を襲った竜巻とみられる突風被害の発生から1日で1年。多くの市民が日常生活を取り戻す中、大きな被害を受けた老舗しょうゆ製造・販売「ハチマル」(同市須々木)が、再起を懸けた新商品の開発に取り組んでいる。鈴木義丸社長(45)は「支援してくれた方々に報いるためにも、おいしいしょうゆを生み出したい」と前を向く。

感謝の気持ちを胸に、新商品の開発に向けて仕込み作業に励む鈴木義丸社長=4月下旬、牧之原市須々木
感謝の気持ちを胸に、新商品の開発に向けて仕込み作業に励む鈴木義丸社長=4月下旬、牧之原市須々木
突風のため土蔵造りの倉庫が全壊した「ハチマル」=2021年5月4日
突風のため土蔵造りの倉庫が全壊した「ハチマル」=2021年5月4日
感謝の気持ちを胸に、新商品の開発に向けて仕込み作業に励む鈴木義丸社長=4月下旬、牧之原市須々木
突風のため土蔵造りの倉庫が全壊した「ハチマル」=2021年5月4日

 1828(文政11)年の創業から194年の歴史を有するハチマル。突風で作業場兼倉庫として使われていた蔵3棟が全壊、2棟が半壊し、保管してあった商品や材料のほとんどが廃棄となった。
 新商品の開発に向けて、被災の1年前から自社醸造を再開したばかりだった。事業の効率化を図るため、約40年間にわたり他社との共同工場で醸造してきた同社にとって、しょうゆ造りの原点に立ち返る大きな挑戦だっただけに、影響は甚大だった。
 それでも鈴木社長は諦めなかった。「踏み出した一歩。もう行くしかない」。がれきの撤去作業を進める中、その気持ちを後押しするかのように当初仕込んでいたもろみが奇跡的に見つかった。半壊した蔵の修繕には倒壊した建物の木材を再利用するなど、これまでの歴史を紡ぐ工夫を凝らし、今年3月から本格的な事業再開に乗り出した。
 蔵の一角では現在、昔ながらの製法でしょうゆ造りが進められている。木おけを使い、製麹(せいきく)からもろみができあがるまでの工程は全て手作業だ。丹波の黒豆や沖縄の塩、富士山の水、北海道の小麦など、原材料にとことんこだわった。発酵と熟成期間を経て商品化は来年の秋ごろを予定し、今年は試験醸造品をクラウドファンディングで販売する予定という。
 鈴木社長は「このしょうゆがお客さんに評価され、継続的な販売ができるようになってからが本当のスタート。その下地をしっかりと築いていきたい」と言葉に力を込めた。

 <メモ>2021年5月1日午後6時半ごろ、牧之原市の布引原、勝田・切山、坂部、須々木の計4地区で竜巻とみられる突風が発生。市のまとめによると、住宅8棟が半壊、94棟が一部損壊したほか、倉庫や工場などの非住宅の被害は計46棟に上った。被害が大きかった布引原地区は風速65メートルの風が吹いたと推定され、静岡地方気象台は「竜巻の可能性が高い」とした。

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