館蔵品を蓄積、新サイト公開 作品情報の活用促進へ 静岡県立美術館長/木下直之氏【本音インタビュー】

 静岡県立美術館は4月、新しいデジタルアーカイブを公開した。収蔵品検索のほか、動画や超高精細画像による作品・作家の紹介など新しいコンテンツも導入した。デジタル時代の美術館はどうあるべきか。役割の変容を聞いた。

木下直之氏
木下直之氏

 -刷新の背景は。
 「新型コロナウイルス禍で、展示室を閉めるという想定していなかった事態に陥った。県境を越える移動の制限で、県外在住者の来館を遠慮していただく時期もあった。公に対して開かれているべき美術館や博物館は、こうした場合にどういう形で開けばいいのかという問題に直面した。国がオンラインの展示活動について、奨励を始めたことも大きい。今回のアーカイブ拡充にも国費が出ている」
 -約2700点の収蔵品は8割以上が画像付きで見られる。狙いは。
 「美術館の活動の基盤はコレクションだから、何を持っているかを公開する際、画像はなくてはならない。これまでのウェブ上の情報提供は予算の問題もあり、お粗末だった。重要なのは、美術館に何が蓄積されているかを広く知ってもらうこと。著作権の問題を解決した上で、全収蔵作品の画像公開を目指す。利用者が作品情報を自在に使えるような環境作りが目標だ」
 -池大雅の国指定重要文化財作品の超高精細画像や、館長と現代美術家森村泰昌さんの対談動画などを加えた理由は。
 「ウェブサイトを活気づけるため。池大雅作品は細かい部分まで拡大して見られるので、(画面に)筆を置く大雅の目を追体験できる。日本人が失った『筆の文化』の再確認につながる。美術作品を語る動画は、もっと充実させたい。館内で実施しているギャラリートークのような形で、学芸員がそれぞれに作品解説する機会を増やせればいい」
 -今後の美術館運営をどう考えるか。
 「パラダイム(見方、捉え方)が変わろうとしている。かつては西洋美術を借りてきて見せるというのが王道だったが、今はさまざまな観点から美術品の楽しさを引っ張り出す試みがなされている。美術館は単に展覧会を見るだけでなく、いろいろ幅広く利用可能な施設になりつつある。生活をより豊かにするための、さまざまな価値の発見を担う場所でありたい」

 きのした・なおゆき 浜松市中区出身。東京芸大大学院中退。兵庫県立近代美術館学芸員、東京大教授を経て、2017年4月から県立美術館長。著書に「わたしの城下町」「股間若衆」「動物園巡礼」など。68歳。

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