時論(4月24日)静岡県の「地域外交」は不要なのか

 沖縄県尖閣諸島周辺で海上保安庁の巡視船に中国漁船が衝突した事件を巡り、日中交流が滞った2010年。就任2年目の川勝平太知事は、上海万博に合わせて企画した「ふじのくに3776友好訪中団」の継続を決め、訪問団を率いて友好提携を結ぶ浙江省と万博会場を訪ねた。
 知事の同行取材で目の当たりにしたのは、日本では表面化しない中国政府や省幹部の歓待ぶりだった。
 万博会場で川勝知事の携帯電話が鳴った。元駐日中国大使で政権中枢にいた武大偉氏からで、訪中をたたえる意を伝えるためだった。
 「あなたは訪問の約束を守った。問題のある時期の交流は、中央(政府)を動かす役割を果たす」
 川勝知事は習近平主席が副主席の当時、北京の人民大会堂で会談した。中国政府要人とのパイプが静岡空港への中国便の就航促進に生かされたのは間違いない。王毅国務委員兼外相とも親しく、19年に静岡市で地方や民間の日中交流を語り合った。「互恵」は一朝一夕で成し遂げられない。
 一党独裁の中国や反日政策が横行する韓国、多様な政治体制のアジア諸国との交流は多難だ。国の外交政策に任せるだけならコロナ後の観光需要やビジネスチャンスは取り込めない。県議会は「成果が見えにくい」と地域外交を批判する。川勝知事は今こそ汗をかき、実利を明示せねばならない。
 日本政策投資銀行とJTBFの調査によると、「新型コロナの収束後に訪れたい国」はアジア、欧米豪とも1位は日本だった。今後、観光客の争奪戦は激しさを増すだろう。県の「地域外交」は正念場にある。不要と断じるにはまだ、議論が足りない。
 

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