感染症法5類引き下げ 「国は具体的な道筋を」【「第7波」への備え㊦】

 新型コロナウイルスの出口戦略でワクチンとともに挙がるのが国産の飲み薬だ。安定供給により早期治療体制が整えば、コロナは季節性インフルエンザと同じように一般医療で対応できる。感染症法上の取り扱いを、病院や保健所の負担の原因になっている2類相当から5類に引き下げる現実味が増す。

専門家も意見が割れる新型コロナの法律上の取り扱い。田島靖久医師は「政治がリーダーシップを」と指摘する=15日、浜松市内
専門家も意見が割れる新型コロナの法律上の取り扱い。田島靖久医師は「政治がリーダーシップを」と指摘する=15日、浜松市内

 浜松医療センター(浜松市中区)は塩野義製薬が進める国内メーカー初のコロナ用飲み薬の臨床試験(治験)に参加した。
 「ずっと危機感があった」。感染症内科部長の田島靖久医師(43)は感染流行のたびに看護師が疲弊する姿に、いち早く状況を打開する必要性を感じていた。第5波の混乱を経て「鍵は国産薬」との認識を深めた昨年9月、塩野義の開発話を知り、すぐに手を挙げた。
 現在までに依頼を超える症例を集め、同社に報告したという。薬事承認されれば「社会を回す一歩を踏み出せる」。5類に向けたビジョンは明快だ。
 5類指定はその時期を巡ってさまざまな意見がある。静岡市立静岡病院感染管理室長の岩井一也医師(56)はオミクロン株の死亡率はインフルエンザ並みと指摘。「特別扱いするほどかかってはいけない意識が強まり、差別を生む。社会的な弊害が大きい」と速やかな変更を主張する。浜松市の矢野邦夫感染症対策調整監も5類賛成をメディアで発信した。
 5類にすると高額な医療費の一部が自己負担になり、受診控えが起きるとの声は少なくない。県健康福祉部の後藤幹生参事は「公費で負担する治療薬を指定するなど柔軟に整理すればいいのでは」と提案する。
 一方で毒性の強い新たな変異株の登場を懸念した緩和慎重論もくすぶる。
 未知の感染症と向き合ってきた専門医や行政職がそれぞれの経験から描く、日常回復への道筋。岸田文雄首相は将来的な見直しを視野に入れつつ、現時点で具体的な展望に踏み込んでいない。政治はコロナ禍の先を示さずにいる。
 田島医師は「検査、ワクチン、治療薬。対策のステップは感染初期からはっきりしていた」と話し、こう続けた。「ゴールまでの時間を設定し、『みんなで乗り越えよう』と呼び掛けるだけで国民の心持ちは違う。主体性を持って導いてほしい」

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