時論(4月20日)1キロ196万円の新茶とは

 静岡茶市場(静岡市葵区)の新茶初取引の最高値は1キロ当たり196万8千円で過去最高を更新した。上場されたうち、唯一の手もみ茶。機械製造の茶の最高値は「八十八夜」にかけて好まれる「8」を並べた8万8888円。
 196万円はどれほど破格か。この日の県内茶の平均は5080円だった。昨年の全国手もみ茶品評会の入札販売で農林水産大臣賞受賞茶に付いた約111万円も大幅に上回った。
 農林水産物の初取引の話題と言えば、東京市場のマグロ初競りが頭に浮かぶ。3億円を超えたこともある。
 静岡茶市場では、競りや入札ではなく、売り手と買い手が直接交渉して価格を決める。上場される少量多数の荒茶を短時間でさばくには、この相対[あいたい]取引が適していると説明されてきた。
 196万円の茶は、県東部全8農協が合併したJAふじ伊豆が持ち込んだ富士宮産で、富士宮富士山製茶が買った。この会社は旧JA富士宮と富士宮市内の茶農家が2014年設立。17年の新茶初取引でJA富士宮の手もみ茶を「茶寿」にちなむ108万円で購入して注目された。身内の売買を果たして取引と言えるかという指摘もある。
 しかし、初取引の「場の力」も確かめられた。県東部の茶は気候のハンディで新茶商戦に出遅れ、販売に苦戦してきた。わせ品種を手摘み・手もみして初取引に打って出て一石を投じた意気込みと作戦は意義がある。
 考えるべきは、茶1キロを200万円で1回だけ買う茶商と、さまざまな売り手から1万円で10キロずつ20回買う茶商では、持続可能な茶業への寄与度が違う点だ。茶市場に求められるのは、多彩で個性ある茶をニーズに応じて最適に仲介する機能である。

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