オミクロン猛威 感染者2千人越えの日も 静岡県内「第6波」検証【新型コロナ】

 静岡県内は年明け直後から新型コロナウイルス流行「第6波」に見舞われた。感染力の強いオミクロン株の影響で1日当たりの最多感染者は2000人を超え、1月27日から54日間にわたりまん延防止等重点措置が適用された。県は感染状況が再び悪化に転じた今月8日、「第7波に入った」との認識を表明。新興感染症との戦いは続く。第6波では重症化する人は少なかったほか、国産経口薬の開発が進むなど、新たな傾向や展開も見られた。

第6波は保育施設が感染爆発の一因となった。ウイルスから子どもを守るため、現場は対応に追われ続けた=13日、県中部(クラスターが発生した施設ではありません)
第6波は保育施設が感染爆発の一因となった。ウイルスから子どもを守るため、現場は対応に追われ続けた=13日、県中部(クラスターが発生した施設ではありません)


 

■保育、高齢者施設で拡大 若い世代のワクチン接種課題


 静岡県内の1日当たりの新規感染者は2021年9月に第5波が収束して以降、数人またはゼロが続いたが、22年に入って急激に増加。2月5、8の両日に最多の2066人を記録した。 photo02 新型コロナ県内「第6波」の推移
 感染爆発の一因となったのは学校・保育施設と高齢者施設。1月8日から4月7日までのデータによると、クラスター(感染者集団)発生数は学校・保育施設が133件、高齢者施設が126件。3番目に多かった病院・クリニックの40件を大幅に上回った。

 保育施設と高齢者施設はマスクの着用が困難な乳幼児や認知症患者を預かる点で共通し、対応の難しさが浮き彫りになった。園児から感染した保護者が職場を欠勤するケースが相次ぎ、社会機能の維持が懸念される事態にも発展した。高齢者は感染をきっかけに基礎疾患が重篤化し、死亡する事例が後を絶たなかった。

 医療も逼迫(ひっぱく)した。県全体のコロナ用病床使用率は2月20日に68・1%まで上昇し、東部は76・9%に達した。冬場は脳卒中や心筋梗塞など重い疾患の対応が重なり、コロナ以外の病床使用率が9割を超える病院が続出。現場から「医療崩壊は過去の流行と比較にならないほど現実的だ」と切迫した声が聞かれた。一方で重症者は数人のまま推移した。

 ワクチンの追加接種では、政府が2回目からの接種間隔の短縮方針を小出しにしたことで混乱を招いた。高齢者施設の入所者らは12月17日に「原則8カ月から6カ月に」、64歳以下は1月13日に「原則8カ月から7カ月に。余力のある自治体・団体は6カ月」の内容が示され、自治体などが計画修正に追われた。

 県によると、高齢者の接種率は4月11日時点で85%を超えた一方、若者や働き盛りで低い。18、19歳が18・7%、20代が22・6%、30代が22・8%、40代が28・8%、50代が49・8%。いずれも全国平均を下回る。

 県内の当該世代は2回目までの接種が遅れたことから3回目を接種できる人の数はこれから増えてくる。ただ、若い人はオミクロン株で重症化しない傾向がはっきりしていて、関係者は「どう促すかだ」と頭を悩ます。

 塩野義製薬は2月下旬、国産では初めての新型コロナ用飲み薬を厚生労働省に承認申請した。治療薬の安定供給が実現すれば、感染症法上の取り扱いの見直し議論が活発化する可能性がある。

 政府は塩野義の飲み薬について、薬事承認を前提に100万人分を購入することで同社と基本合意した。一方で、胎児に骨格形態異常を引き起こす「催奇形性」が動物実験で確認された。既に承認されている米メルク社の「モルヌピラビル」も催奇形性の問題があり、妊婦への投与は推奨されていない。

 

■派生型、接種率 今後を左右 後藤幹生・県健康福祉部参事


 当初は早期収束の楽観論もあった新型コロナウイルスオミクロン株による「第6波」。実際には感染爆発が起き、過去の流行をはるかに超える感染者数を出した。医師でもある県健康福祉部の後藤幹生参事(58)が原因と分析、今後の見通しを語った。
 photo02  静岡県健康福祉部の後藤幹生参事
 -第6波はなぜ長期化したか。
 「ウイルスは人から人にうつるたびに遺伝子が変異する。国立遺伝学研究所(三島市)によると、デルタ株は約40カ所が変異数の限界らしく、それ以上変異の多いデルタ株が見つからない。おそらくそれがデルタ株の寿命で、人に感染できなくなって急速に減ったと思われる。オミクロン株では変異が約60カ所まで検出されていて、単純に考えるとデルタ株より寿命は1・5倍長く、長期間感染できるのではないか。さらに派生型『BA・2』への若返りも起きた」

 -オミクロン株の感染力はどの程度強いのか。
 「感染者1人から平均何人にうつすかを示す『実効再生産数』がデルタ株の3倍くらいとされる。ピーク時における直近1週間の人口10万人当たり新規感染者数はデルタ株の107人に対し、334人。ほぼ計算上の通りになった。感染者が急増することは予想の範囲内だったと言える」

 -医療提供体制はまたしても逼迫した。
 「入院患者のほとんどを高齢者が占めたことが一因だ。高齢者は1週間ベッドで寝ていると自立が難しいほど筋力が落ちる人がいる。リハビリが必要になり、感染性が消えても帰れない。回復期や慢性期の病院への転院も円滑ではなかった。日本は医療機関の入院を有事であっても自治体が統制できない仕組みだからだ。国や県が『絶対に転院』と言っても難しい。受け入れ医療機関に強力なインセンティブ(動機づけ)を付けるか、入院を全く受けないと保険点数に差ができる-などの対策をしない限り、改善しないかもしれない」

 -まん延防止等重点措置をどう評価するか。
 「効果は一定程度あった。過去の流行の経験から、感染拡大の最初の導火線は飲食の場だと分かっていた。それを抑えたことで、ある程度の時間稼ぎになった。措置解除後、感染者は再び増え始めた」

 -若い世代のワクチン3回目接種率が低い。
 「『自分たち世代はオミクロン株で重症化しない』と分かったことで危機感がなくなった。40代以下の接種率は2割程度。今後2回目接種から6カ月経過した若年者が増えても、接種率はあまり上昇しないかもしれない」

 -「第7波」の感染状況の見通しは。
 「派生型のBA・2やXEの感染力と寿命の長さ、不織布マスクの実施率、さらに3回目接種率が左右すると思う。3回目接種率が全体で50~60%に達すれば、第6波よりピークは低くなると思うが、秋までは県内で1日数百人の感染者が続くのではないか」

 -感染症法上の取り扱いを2類相当から5類に引き下げるには。
 「保健所や医療機関の負担をどう減らすかだ。今は陽性者を全数届け出する決まりなので、医療機関は発生届を書くか、ハーシス(政府の情報共有システム)に入力する作業を要する。保健所の負荷も届け出に連動する。コロナが既に“普通の風邪”である若年者を含めた全感染者をそこまで管理する必要があるのか、少しずつやめましょうという議論が大切だ」  

 ごとう・みきお 1964年生まれ。京都大医学部卒。静岡県立総合病院、市立島田市民病院、大阪・市立岸和田市民病院などを経て2011年に静岡県庁採用。大阪府出身。静岡市葵区在住。

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