中日本高速道路・宮池克人社長に聞く 自動運転見据え、より安全に【未完の大動脈 新東名10年(番外編)】
東西の人とモノをつなぐ新東名。中日本高速道路の宮池克人社長(75)に、開通から10年を迎えた大動脈の展望と課題を聞いた。

-災害時の緊急輸送路として、防災機能の強化をどう図るか。
「阪神大震災で耐震基準が変わり、新東名は基準に合った設計で造られ、大きく損傷することはないだろう。段差などができても、24時間以内の復旧を目標に、各地に資機材を備えている。静岡県内の東名、新東名のサービスエリア、パーキングエリア計18カ所が3月、国土交通省から『防災拠点自動車駐車場』に指定された。備蓄状況を精査し、非常用発電機や水、燃料などを拡充していく」
-新東名の経済効果の見通しは。
「(東名と新東名のダブルネットワーク形成で)交通量は以前より大幅に増えたが、渋滞は7割、交通事故は3割減っている。通行止めによる東西の寸断が回避でき、利便性、信頼性、安全性が向上した。さらに周辺ネットワークの整備も進んで新名神、中部横断道、圏央道ともつながった。全線開通すれば、静岡は首都圏にも中京圏、関西圏にも、より近くなる。利便性の向上で、ビジネスの拡大がさらに進むだろう」
-自動運転実用化の動きが加速している。
「自動運転を支援するため2023年度から、未供用の新御殿場インターチェンジから東に4キロの静岡県内区間で車と道路間の通信(路車間通信)技術の実証実験を行う。車から検知できない渋滞や障害物などの情報を高速道に設置した機器や監視カメラで把握し、早期に後続車に伝える。実験結果を踏まえ、実用化への次の段階として、6車線化された御殿場ジャンクション(JCT)-浜松いなさJCT間での展開を考えていく」
-全線開通のめどは。
「経済、防災面で完全なダブルネットワークの形成には大きな期待が寄せられていて、早期に実現したい。ただ、未供用区間は地質が悪く、トンネル掘削が順調に進んでいない。急ぐあまり、山が崩れるようなことがあってはならない。地質状況を踏まえながら安全に工事を進め、開通のめどを示したい。自動運転時代の到来を控え、道路管理者として安全走行を下支えし、事故や渋滞の少ない、さらに安全で安心、快適な道路環境を提供していきたい」
みやいけ・よしひと 1971年に中部電力に入社し、浜岡原子力発電所(御前崎市佐倉)の5号機建設などに携わった。2007から同社副社長を務め、14年から現職。愛知県出身。75歳。