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ギフチョウ、守られ舞う 浜松市北区の枯山 条例で卵や食草保護

 野山の花が咲き始める頃に姿を見せる「ギフチョウ」が、浜松市北区引佐町渋川の枯山で稜線(りょうせん)を優雅に舞い始めた。近年、森林の開発や放置林による生息環境の悪化、乱獲の影響を受け、県内では同所が残された貴重な生息地となっている。1970年代前半には、静岡市清水区の浜石岳や富士宮市沼久保などでも生息が確認されていた。

スミレが咲く観察路を舞うギフチョウ=3月下旬、浜松市北区引佐町渋川
スミレが咲く観察路を舞うギフチョウ=3月下旬、浜松市北区引佐町渋川
幼虫の食草となるヒメカンアオイ=3月下旬、浜松市北区引佐町渋川
幼虫の食草となるヒメカンアオイ=3月下旬、浜松市北区引佐町渋川
枯山の観察路に立てられているギフチョウ保護に関する案内=3月中旬、浜松市北区引佐町渋川
枯山の観察路に立てられているギフチョウ保護に関する案内=3月中旬、浜松市北区引佐町渋川
スミレが咲く観察路を舞うギフチョウ=3月下旬、浜松市北区引佐町渋川
幼虫の食草となるヒメカンアオイ=3月下旬、浜松市北区引佐町渋川
枯山の観察路に立てられているギフチョウ保護に関する案内=3月中旬、浜松市北区引佐町渋川

 浜松市では条例で天然記念物に指定され、幼虫の食草「ヒメカンアオイ」、卵、幼虫を含めて採集が禁止されている。同所では市から委託を受けた「ギフチョウ保護監視員」が3月中旬~4月中旬ごろまで、観察路の監視パトロールやチョウの飛ぶ道(蝶道)を整備し、保護活動に力を入れている。
 「枯山は条例とパトロールの効果があり、個体数が維持された貴重な生息地だ。地質も生息地の環境維持に関係している」と語るのは、静岡昆虫同好会会長の諏訪哲夫さん(79)。枯山の地質は、蛇紋岩質(じゃもんがんしつ)で高い常緑広葉樹が育ちにくい。落葉広葉樹林帯のため春になると、明るい日差しが地上に差し込み、幼虫の食草となるヒメカンアオイや成虫が蜜を吸うカタクリやスミレなどが一気に生長する。四季、自然環境がリンクしたサイクルでギフチョウの適した環境が維持されている。
 諏訪さんは「10カ月間さなぎで過ごし、枯山の稜線を春色に染めるはかないギフチョウの姿を優しく見守ってほしい」と話した。

〈メモ〉ギフチョウ 日本の固有種で、アゲハチョウ科の小さなチョウ。1883年、岐阜県で発見されたことから「ギフチョウ」と命名された。本州の里山環境がある落葉広葉樹林帯に生息する。羽の長さは雄が約3センチで、雌が一回り大きい約3・3センチ。幼虫の食性は限られ、カンアオイなどが知られている。幼虫は脱皮を重ね、さなぎになり次の春まで10カ月を過ごす。

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